この小物に求められる物を考え直し、本当に必要/有用な小物の形を整理し、方向性を決める大まかな設計を行います。また、その時点での技術/スキルとに照らし合わせ て、要求する仕様を決定、文書化します。成果物は「外部仕様」としま す。
今回は、ミニアンプ0.1の改良版ですが、また白紙から考え直しました。以前の文書を見なくとも分かるような書き方になっています。既に0.1の文書を読まれた方には重複する説明があります。
目次
方向性(目標とするもの)
不満な所、求める物
- PCやテレビ内蔵のスピーカではイマイチなのに気づいてしまった
- オーディオ用スピーカを活用すれば良い
- スマートフォンやPC内に入っている音源も、たまにはちゃんとした音で鳴らしたい
- 色んな音源を入力でき、生活環境で常に使用できるような小物
- 稼働時間が長くなるので、消費電力が気になる
- 面倒な操作はしたくない、透過的な存在が良い、がメインボリュームは必須
- ~1万円の予算、オーディオ機器としては簡易的な位置づけで良い
- 置き場所に困らない小型の筐体にしたい
- レベルメータはできたら欲しい(調整用と自己主張として)
本当に必要か
昔使っていたオーディオ品質のスピーカを利用することによって、より良い音質になるはずだというのが、そもそもの発案です。実際にオーディオ用スピーカーをテレビにつなげる生活をすると、テレビの音なのか戸外の音なのか判別出来ない事もあり、音質が 改善されている事を実感できます。このまま、古いオーディオ機器を使っても良いのですが以下の事情があります。
- 使うたびに電源操作や入力切り替えが必要で面倒
- アンプを設置しにくい(大きい)
- 消費電力が大きく、電源入れっぱなしはできない
- ケーブル接続など何かにつけて面倒、もっと安楽に
- とうとうアンプが壊れてしまった
とにかく、仰々しいオーディオアンプは必要ではなく、お手軽に使えるPC/スマホ連携 +ミキサー+小出力アンプがあれば満足できるのです。
簡単な解決方法はないの?
(1)市販品を買う
市販品で要望を満たす物がないか?オーディオ用のプリメインアンプで探してみましたが最近になってようやくBluetoothをサポートした製品が出てきたものの、やはりスペックが高すぎ・筐体が大きすぎ・予算も釣り合わなかったのですが、ボックス型(手のひらに乗るタイプ)で安くて良さそうな製品がありました。
- Bluetoothアンプ ELEGIANT ステレオ スピーカー パワーアンプ (3.5k円/Amazon)
- Nobsound NS-10G Mini Bluetooth 4.0 デジタルアンプ (3k円/Amazon)
- JUST MIXER 5 (8.6k円/秋月)
前2つはミキシングできませんのでダメです。最後の製品にはアンプがありませんが、要望には一番近い製品です。これに小出力のアンプを付ければ良いんですが、何か釈然としません。そもそも、この製品は声や楽器のレコーディングするためのものであって、再生音源を想定していないと思います。別の方法を探した方が良いと思われます。
(2)モジュールの組み合わせ
実は、既に色々やっています。
- PC+USBスピーカアダプタ
- ミニアンプ+Bluetoothアダプタ+ミキサー
最初の「PC+USBスピーカアダプタ」は、全ての音源をPCに集約し「USBオーディオ出力アダプタ」でスピーカを駆動する方法です。普通、PCにはライン入力機能がありますし、スマートフォンとはBluetoothやWiFi経由で連携でき、多くの音源を集約できます。USBアダプタは電子部品屋で安く入手可能でした。製作費千円ぐらいでしたの で、最高のコストパフォーマンスでした。決定的な弱点は、PCを動かしていなければならないので、エネルギー消費的にはかなり不利で、いちいちPCを起動させなければならないのが不満でした。また、使ったUSBアダプタが、高域が強調された音を出すので、気に障っていたのも大きな不満点でした。1〜2年は我慢して使用していました。
次の「ミニアンプ+Bluetoothアダプタ+ミキシング回路」は、安いパワーアンプキット(エレキットNT-10)と、Bluetooth→ライン変換アダプタを組み合わせて、「1ラ イン入力+Bluetooth」のミニアンプを製作しました。費用は約3千円と、これも低コ ストで実用的な小物となりました。PCショップの出物で、500円のBluetooth変換アダプタが入手できたので作れたと言うのが実情です。音質も申し分無く(私見)何の不満もなく、とても快適な使用感でした。が、2年位でBluetooth変換アダプタが壊れてしまい、せっかく便利に使って来た機能が無くなり、不満感が増していきました。
これらを修理するだけでも良かったのですが、やるんだったら0からの設計で作ってみたくなりました。
根本的に違う発想はないの?
(1)思い切って無線接続のみにする
お手軽さを求めていくとケーブル接続の面倒さが浮き上がってきます。思い切ってス ピーカ自体を無線接続のみにしてしまえば、とても便利になります。
- 小物を左右スピーカそれぞれに配置する事で、長いケーブルを引く手間が減る
- スピーカケーブルからのノイズ放射を減らせる
- 無線を多セッション可能にする必要がある(実現している製品がある)
- アナログ音源に対しては、別途無線アダプタを用意しなければならない
- メインボリュームの実装が難しい
- 左右のスピーカそれぞれに電源を用意する必要あり
- バッテリー駆動にすれば解決できるかもしれない(充電問題あり)
左右のスピーカー毎に電源を用意する位なら、スピーカ間のケーブルを引く事を許容できる場面の方が多いかと思います。バッテリー駆動化で対策するにしても、充電操作の利便性が悪い部分が残ります。つまり、常時使う「小物」としては、あまり現実的ではないと言えます。
別の問題として、Bluetoothで1つのステレオ音源ソースから、別々の2つのシンクデバイスに送り込むには、特別なアプリケーションプログラム(ドライバ的なソフト)が 必要。中継「小物」を作って問題回避しようとするとコスト上で不利。複雑化するだけで、現状では良い方法とは言えません。その後にツインスピーカをサポートする Bluetoothモジュール ”ISSC BM90′′ がある事が判明。まだ、入手性は良くないので問題解決とはなりませんが、将来的には、あり得る構成かもしれません。
少し手直しして、1つの「小物」で、左右のスピーカに接続する方法なら、構成的には 単純なのでコスト/パフォーマンスが良い。これはBluetoothスピーカ/アダプタと同じなので買った方が安い。(ミキシング機能がないので、これも無理)メインボリュームなどの操作の問題については、リモコンで設置場所と操作場所を分離する事で解決可能。結局、単純なパワーアンプが現実的な選択と言うのが私的な結論です。
要件(具体的な小物のイメージ)
機能
機能の整理
- 準Hi-Fi品質(AM放送レベル)のパワーアンプ
- スピーカ出力は常時使用する物なので小出力で良い
- 音声入力はヘッドフォン/ライン/Bluetooth
- ミキサー(レベル調整、バランス調整、ミキシング機能)
- 自動化(電源、入力レベル、入力カット)
- 本体の大きさは横1/2DINサイズ
- 電源は商用AC100V、省電力
- レベルメータ搭載
<音質>
単純なオーディオアンプ機能。音質にはこだわらない。具体的にはラジオの中波AM放送/ローカル局レベルという表現。
<出力>
スピーカ出力は、集合住宅環境で近所迷惑になるような出力は必要なく、大きすぎないけど小さすぎないという難しいところ。以下はワット数と具体的な用途について主観的な解釈。
•〜1W 個人エリアで楽しむ範囲
•〜10W 軽音楽やリビングでの使用
•〜100W 体育館でのアナウンス
•〜1000W 100名規模のコンサート
経験的に言うと1W〜10Wぐらい。日常的使う音量なので経験的に左右合わせて3W程度で十分、あまり大きな出力を設定すると、消費電力が増えるので、小さめの設定とします。対応できるスピーカーユニットは、流用しやすくするために、幅広い仕様にしたい所です。家庭用の物はインピーダンス4〜8Ωがほとんど。
<入力>
現在、音源の伝達手段はアナログではライン入力やヘッドフォン出力、デジタルではS/PDIFですが、高音質を求める要件とは思っていないので、ライン/ヘッドフォンのみで良いと思います。これにより、ほとんどのオーディオ機器につなげる事ができます。マイク/フォノまでは対応不要と考えます。
スマートフォン内の音源を鳴らす場合、ほとんどの機種ではヘッドフォン出力がありますので問題とはなりませんが、ワイヤレス接続だと、もっと使いやすくなります。スマートフォンやPCは、WiFiやBluetooth機能を持っているので、これを利用できます。手軽さという意味ではBluetoothの方が良いという判断になります。
<特殊要件>
ミキシング機能が必要。レベル調整については、ヘッドフォン入力の場合は音源側での調整が可能だが、ライン入力の場合は規格レベルで送り出しているはずなのに実際の機器ではそうでない事もあり、小物側で調整できた方が良い。バランス調整は、音源によってバランスが崩れている場合補正をかけたり、モノラル音源の定位置を決めたりする時に使用しますが、前者は最近はあまりそういう事態になることはなく、後者はレコーディング用のミキサーで必要になるような機能なので、あまり重要ではないです。ただ、あった方が面白いかもしれません。(例えば、テレビ音源は右寄りから、スマートフォン音源は左寄り から聞こえる様にするなど)
<自動化>
透過的な存在にしたいので、できるだけ操作しなくて済む様に、単純なスイッチ操作などは自動で行われるようにすると便利。
•電源オン/オフ:一定時間音源がなかったら電源をオフに、入ってきたらオンにする
•入力レベル:AGCのように自動で変更されれば楽
•入力切り離し:接続されていない入力系統は、ホワイトノイズ源となるため、長時間無信号だったら切り離すようにする
入力レベル自動化は、勝手にレベルを変更されると逆に使いにくい事も想像できるので、少し工夫が必要。複雑な仕様になりそうな気がするので、今回は未対応。それ以外は、対応することとします。
<省電力>
私の生活パターンとしては、在宅時は必ずと言って良いほど、テレビをつけっぱなしにしていますので、アンプも長時間稼働となります。そのため省電力、高効率化は重要な条件となります。また、アイドル時の電力も重要で、昨今の家電の仕様を参考にすると0.5W程度と設定します。
<その他>
レベルメータは、レベル調整を行うためにあった方が良いが、レベルオーバ表示のランプだけでも、耳で聞いて歪み具合でも調整可能なので、必ずしも必要ではありません。しかし、音感が悪い方には、必要な度合いが上がります。優先度は高くはありませんが、実装する方針にします。
基本的には、調整用途なので実レベルとピークレベル、表現はゲージ表示(棒グラフ)で、反応速度は最低でも10Hz以上と設定します。
外観
外形としては、小さければ小さいほど良く、エレキットNT-10を使った小物が、とても扱いやすい大きさだったので、これと同じサイズの横73mm×縦42mm×奥行き 110mm位(1/2DIN相当)を目安とします。
操作ボタン・ツマミは必要最小限が良い。電源スイッチは自動化で不要にできます。入力切換えスイッチは、全入力をミキシングすれば不要です。通常使わない調整ボタンなどは不便な位置で良い。メインボリュームだけは音量を調整する機会が多いし、不意の音消しにも有効なので必要です。リモコン操作にすると「小物」の設置場所の自由度が増しますが、このところ家電のリモコンだらけになっているので、あまり増やしたくはありません。入力ソース側で音量調整する機能があれば、それで対応してもらっても良いとも考えます。主なターゲットはヘッドフォン接続のテレビなので、テレビのリモコンに頼れる。スマートフォンやPCでも同様。無理にリモコンを装備する必要は無いと考えます。
正面:メインボリュームは大きめの回転型つまみ。以前、スライドボリュームが付いたアンプを使っていましたが、意外と使いにくかったので却下。表示器は、3系統のレベルメ ータで薄暗い部屋でも使えるように自発光もしくはバックライト型。
背面:入出力端子類を集中配置。スピーカ出力はターミナル端子、ヘッドフォン入力用のミニピンジャック×1、ライン入力用のRCAピンジャック×1組、電源コネクタもし くは直接電源コード直付け。一般的な配置で問題なし。
素材仕上げ: 無線アンテナの都合があるので、全面金属系の筐体は不可。重厚なオーディオ機器という感じでもないので、アルミパネルなどの面倒なものも不要。非金属系素材、とりわけ加工しやすいプラスチック系の素材を使用。塗装を上手くすると、それなりに見えるので問題ないと思います。
実現性はありそうか
特に難しい要件ではないので、設計を進める事には問題ないと思われます。そもそも、バージョン0.1で多くの新しい技術を経験しているので、より最適化された設計になることが期待できます。
外部仕様
仕様表
表示詳細
表示項目の整理。
•電源ランプ ….省略可能
•入力レベル設定×3系統 ….ゲージ型/数値型
•入力バランス設定×3系統 ….ゲージ型/数値型
•入力LR実レベル×3系統 ….ゲージ型
•入力LRピーク×3系統 ….ゲージ型/ピークオーバランプ
•出力レベル設定 ….ゲージ型/数値型/無くても良い
•出力LR実レベル ….ゲージ型
•出力LRピーク ….ゲージ型
実デバイスの選択:
小さい面積に、これだけの表示項目を詰め込むのは無理です。思い切った割り切りをするか、切り替え式などでパネル面積を少なくする工夫が必要となります。全てを諦めるというのも潔くて良いかもしれません。全てを満足するには、高密度なゲージ表示を実現できる小型のグラフィック表示デバイスしかなさそうです。これでどうなるか考えてみました。
1.5〜2インチ級のパネルでは、128×128ドットの表示器が多いのですが、これだと何とか表示できるようです。サイズ的に、ボリュームつまみとかぶる部分がでそうなので、出力レベルメータの表示は諦めます。系統別のレベルメータで代用できるので、出力レベルメータは無くとも支障がないと考えたからです。ロータリーエンコーダになった場合、「出力レベル設定」表示に利用できます。「小型のカラーグラフィックディスプレイ」を使い、上記の画面レイアウトとします。
操作詳細
スピーカ出力レベル調整:
大型の回転つまみで行います。もう既に最初からイメージが固定してしまっています。最優先事項です。
系統毎のレベルとバランス調整:
筐体が小さいので、これ以上の操作スイッチ/ボリュームを付加するのはかなり無理な話です。
タッチパネルがついた表示器であれば問題ありませんが、小型のグラフィックディスプレイモジュールには、タッチ式のものは存在しないようです。外付けでタッチセンスを行う手もありますが、ノースキルなので避けたいところです。
現実的には、プッシュボタンを使った切り替え式しかないと考えます。使用する頻度は極めて少ないので、多少不便でも問題ないでしょう。搭載位置もフロントパネルに固執する必要もありません。
大型回転つまみにロータリーエンコーダを使った場合、ボタン数を減らせます。さらに軸に押しボタンスイッチの機能が付いた物を使えば、全てのボタンを削減する事も可能です。見た目には、回転つまみだけに出来ます。
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