家に近づくと、ひとりでにロックが解除され、外出すると勝手にロックされる小物です。鍵の代わりをするのが、スマートフォンです。Bluetoothでドアに装着した小物と直接通信し、全く操作せずに解錠と施錠を行います。小物の取付けは、扉の内鍵(サムターン)に合わせてケースを被せると、磁石でぴたっと固定されるので、とても手軽です。
目次
機能/特徴
- もう鍵を差し込まなくていいんです
- 鍵はスマートフォンの中にあります、場所も重量も増えません
- ピッキングされたら抵抗しちゃいます、強制入室時の心理的抵抗も行います
- 停電時には、自動的にロック解除するので、災害時の救出をサポート
- 単純、安価、製作容易
仕様
名称:接近解錠扉
分類:自動遠隔操錠前
制御錠前数:1(ドア毎)
鍵の数:複数
検出距離:数メートル
検出方向:全方位
接近検出方式:微弱電波通信(Bluetooth)
キー:スマートフォン:iPhone5以降、iPadも可能
外形:幅95mm、奥行70mm、高さ70mm
重量:約400g
電源:AC100V 1W未満
製作費:約5000円
使い方
鍵の登録
初めに、スマートフォンと小物の間で、新しい「鍵」を作って交換し合います。
①小物の「ペアリング」ボタンをオンにします。緑のランプが1秒間隔で点滅し出します。(緑が点灯状態だと、既に鍵を持っているスマートフォンが接続されしまっている状態なので、そちらのアプリケーションは停止させて下さい)
②スマートフォンでALDアプリケーションを開きます
③小物を見つけるとパスコードを聞いて来ますので’123456’を入力します。
④鍵が作られ、正常に済むとドアが開いた状態になります。
⑤小物の「ペアリング」ボタンを元に戻して下さい。そのままにしておくと、知らない人が新しい鍵を登録してしまいます。
通常の使用
アプリケーションは常に動作させて下さい。バックグラウンド状態(裏画面)でもかまいません。ドアに近づくと開いて、数メートル離れると閉じる動作をします。接近状態(接続中)では、スライダを操作する事で、解錠/施錠を指示する事も出来ます。
もちろん、本物の鍵を使って開ける事も出来ます。ピッキングなど強制的な解錠を行われた場合、オルゴール(猫踏んじゃった)がせわしなく鳴り出します。また白ランプが点滅しつづけ、入室された痕跡を残します。
鍵を削除したい場合
設定のBluetooth画面を開きます。
ALDの(i)をタップして削除を指示して下さい。
設計書
この小物を再現するのに必要な、設計の結果情報です。
技術的なポイント
ハードウエア
- Microchip Technology社のPIC32MXマイクロコントローラ
- サーボモーターの制御
ソフトウエア
- プログラミング言語はC、開発環境はMPLAB X、コンパイラはXC32(GCC)
- Microchip提供ソフトウェア標準ライブラリ群(Harmony)の利用
- タイマ割込+PWMでオルゴール機能の実装
- 自家製Bluetoothソフトウエアスタックを利用し、BLEでiPhoneとの連携
開発法
- 回路製図は、無料で利用出来るCadSoft Computer社のEAGLEを使用
- ソフトウエア開発は、マイクロチップ社純正開発環境を使用
- コンパイラもXC32の無料モード(最適化-O1まで)で使用
回路図
部品表
ソフトウエア
開発に必要な物
本体側
PICkit等の書込み器と、PC(MPLAB Xが動作する環境、Windows, Linux, Mac等が可)と以下のソフトウエア
- MPLAB X IDE v3.20 (*1)
- XC32 v1.40 (*1)
- MPLAB Harmony v1.06.02
- Pickit3
*1)無料で利用できます。Microchip社のサイトからダウンロードして下さい。
スマートフォン側
BLEをスキャンしたり値を書き込んだりできるアプリが世の中に出回っています。アプリストアを検索すると、LightBlue, BLExplrなど、いくつかヒットすると思います。テストだけなら、これが便利です。ただし、自動でコネクトしたりする機能なんてありませんので、いちいちスマホの操作をしないといけません。実用的に使うのであればスマートフォンアプリ開発環境を用意する必要があります。
iPhoneの場合、xcodeが動作するPC環境と、iPhone/iPadの実機で動かすための年間約100ドルの開発ライセンスが必要です。
Androidでの開発については不明ですが、無料でそろえられるみたいです。
ソースコード
ダウンロード(本体側)
MPLAB Xプロジェクトファイル、2017.2.23
ダウンロード(スマートフォン側)
iPhone,iPad用:xcode8.2.1プロジェクトファイル、Objective-C版 2016.2.23
iPhone,iPad用:xcode15.2プロジェクトファイル、Objective-C版 2024.3.6
xcodeのバージョンアップに伴う修正
iPhone, iPad,mac用:xcode15.2プロジェクトファイル、swift版 2024.3.6
Swift言語でリコーディング、macでも動作するようになった
ライセンス
フリーソフトウエア(GPL v3)
ソースファイル一覧
モジュール関連図
製作
基板
大した回路ではないので、蛇の目基板にて作成可能です。これは、製作途中の物で最終回路とは若干異なります。
ケース
3mmのアクリル板をコの字形に加工しただけの、簡単なものです。基板は、20mm位の長いビスを使ってプッシュスイッチの頭が丁度出るように高さを合わせます。サーボモーターは両面テープで固定しているだけです。がっちり固定しないで少し遊びがあった方が良いでしょう。ドア面には、強力磁石を貼付けています。また、ドアと接触する部分はスポンジを張付け、キズが付きにくくしておきます。
サムターンの接触部分はこんな感じです。とりあえず、ノブに黄色い養生テープを張っていますが、スポンジですき間を埋めたいと考えています。
開発情報
開発時の資料は別ページに記録しています。
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あとがき
最初に書いたポンチ絵が2009年ですので、7年越しの開発となりました。無線通信の部分がネックでなかなか進みませんでしたが、Bluetoothライブラリのおかげで簡単に製作できました。しかし、その間に同じ様な市販製品が世に出てた事に対しては、寂しい感じもあり、また同じ考えを持つ開発者がいたのが嬉しいと言う思いもあり、複雑な心境です。
2週間前ぐらいから実際に使い始めたばかりなのですが、快適快適、ドアの前で少し待つ事もありますが、おおむね良好。習慣で鍵を差し込んでしまい、勝手に回ってしまうという事もありました。もう少し様子見の状態です。
半年以上経過しましたが、まさに快適の一語です。部屋を出て行くとロックされる音が鳴り、帰ると鍵が解除される音が鳴るのは気持ちのよい物です。多少開くまでに時間がかかる事もありますが、鍵を差し込むよりは待った方が良いと思える場面は多いものです。手荷物が多かったり、鍵を出しにくい服装をしていたりする場合です。最近はうっかりして本物の鍵を持たずに外出してしまう事も多々あります。今まで幾つかの小物を作って来ましたが、本当に役に立つ小物の逸品になりました。iOS11のバージョンアップで、鍵の解錠/ロックの挙動がかわってしまいました。Bluetoothの実装方法が変わったのか、プロセス/タスクの管理方法が変わったのでしょう。影響されないようにアプリを改修する必要がでたようです。→使い込むと学習するようで、不都合は無くなりました。
2024.3.6: 6年以上経過し、サーボモーターが故障。機能しなくなったら、鍵をかけ忘れる事多々。ないといけないものとなった。修理のついでに、スマホ側のアプリの不具合対応した。画面のダークモードとやらのせいで、文字が見えなくなる問題。ついでにSwift勉強しました。
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