自作電子小物/HA7車両情報データロガー/SDカード版
自作電子小物/HA7車両情報データロガー/SDカード版
HA7 logger mini V0.3
2012年3月18日日曜日
ホンダの軽自動車 アクティ トラック用の燃費計兼データロガー/レコーダです。車両との接続は、車両診断コネクタ(OBD2)へつなぐだけ、本体が小さいので設置場所にも困りません。お手軽に瞬間燃費、当日燃費、総平均燃費を確認できます。 製作費は3000円〜、表示に小型グラフィックLCDモジュールを利用、記録はSDカードに出力し、制御部にアトメル社のATmega328Pを使用し、ソフトウエアはC言語にてコーディングしています。
<機能/特徴>
■手軽に、常時、走行データを表示し、同時にSDカードへ蓄積される
■ガソリンを節約する運転をするための情報を得られる
■データはCSV形式ファイルで利用範囲が広い
■汎用部品で安価・製作容易
重要:誤動作した場合、車両の暴走等で生命の危険に及ぶ可能性があります。
注意:全ては、車内にあるコネクタが、OBD2仕様であるという想定を元に開発しています。メーカが仕様開示している訳ではないので、得られる情報は正しいとは限りません。電気的な接続で通信を行いますので、車両に対し物理的もしくはソフトウエア的な故障につながる事もあり得ます。これは、全くの無保証の元に提供する情報です。
<仕様>
名称:HA7 logger mini V0.3
分類:車両データ記録器
記録データ項目:
エンジン冷却水温度 ect[℃]
短期空燃比補正値 shrtft1[%]
長期空燃比補正値 longft1[%]
吸入管絶対圧力 map[kPa]
エンジン回転数 rpm[rpm]
車速 vss[kn/h]
点火時期 sparkadv[°]
吸気温度 iat[℃]
スロットル開度 tp[%]
O2センサ出力電圧 o2s11[V]
空然比補正値 shrtft11[%]
バッテリ電圧 vpwr[mV]
吸入空気量 maf[g/s]
吸入燃料量 mff[g/s]
移動距離 dist[m]
使用燃料量 fuse[ml]
出力CSVファイル例
表計算ソフトへの取込み例
文書ファイル:20120318.numbers (Apple numbers)
文書ファイル:20120318.ods (ORACLE OpenOffice)
表示項目:
燃費計
瞬間燃費[km/l]
日平均燃費[km/l]
累積平均燃費[km/l]
走行時間率[%]
稼働時間[時分]
停止時間[分秒])
経済速度
車速
燃費
上記2項目の散布図
駆動系
車速
エンジン回転数
上記2項目の散布図
各ギアでの最高速、最高回転数等を確認できる
補助計器
エンジン冷却水温度
エンジン回転数
バッテリ電圧
燃費関係数値
移動距離[km]
使用燃料量[l]
燃費[km/l]
走行時間[時分]
稼働時間[時分]
走行時間率[%] ここ迄は累積値と日単位の値を表示
瞬間吸気流量[g/s]、瞬間噴射燃料量[g/s]、瞬間燃費[km/l])
全基礎値
取得データ全項目を数値で表示
取得時間間隔:
2〜3秒
接続形態:
OBDコネクタ
車両:
対応車種:HONDA ACTY TRUCK GBD-HA7(2006年式)のみ
接続方法: グローブボックス下のOBD2コネクタへの接続
記録媒体:
種類:SDカード(標準サイズ)2GB以下
フォーマット:FAT12またはFAT16、事前にフォーマット済みである事
電源:車両より供給。動作時0.2〜0.4W、スタンバイ時2mW程度。
外形:幅約52mm、奥行約25mm、高さ50mm
重量:100g以下
製作費:約3000〜6000円ぐらい(ケースと、AVR書込み器、PCやインクジェットプリンタ等の基本的な開発環境を含みません。また、OBDコネクタとの接続にはワイヤ差し込み法での前提です(+1000円位))
<設計書目次>
1.技術的なポイント
1.1 ハードウエア
1.2 ソフトウエア
1.3 開発法
2. 回路図
3. 部品表
4. ソフトウエア
4.1 開発に必要な物
4.2 フローチャート
4.3 ソースコード
5. 実装
5.1 基板
5.2 ケース
1.技術的なポイント
1.1 ハードウエア
・Atmel社のATmega328Pマイクロコントローラ
・UART と ISO9141-2(K-line) 変換
・EPSON社L1F10085グラフィックLCDモジュール(コントローラ:S1D15G10)を3本ポートで接続
・バックライト用LEDのトランジスタ駆動
・照度センサ用のフォトトランジスタNJL7502L - アナログ、A/D変換
・SPI接続のSDカードの使用
・圧電スピーカの単純直接駆動
・32,768Hz時計用水晶の低電力動作
・電圧の計測
分圧抵抗による直流電圧の計測
ATmega328P内蔵の10ビットA/Dコンバータの使用
デジタル入力とアナログ入力の共存
1.2 ソフトウエア
・プログラミング言語はC、開発環境はAVR studio、コンパイラはWinAVR(GCC)
・ソフトウエアでUARTを実装
・ソフトウエアでL1F10085とのインタフェースを実装
・Timer2割込でのカレンダ時計の実装
・独自SDカードライブラリを利用しCSVファイルを作成
・独自グラフィックLCDモジュール表示ライブラリの利用
・printf()の出力先をSDカード書込みへリダイレクト
・ビープ音をソフトウエアで出力
・バックライトをPWMでの輝度調整と、照度センサと連動した自動調整
1.3 開発法
・プログラム開発は、無料で利用出来るAtmel社の標準的なIDEであるAVR Studioを使用
・回路とプリント基板設計は、無料で利用出来るCadSoft Computer社のEAGLEを使用。
2.回路図
L1F10085とOBD2コネクタは新たにユーザライブラリTOG.lbrを登録しています。
3.部品表
文書ファイル:V0_3_Parts.numbers
OBDコネクタ、基板、 線材、ケースを除きます。
コネクタは、メッキ線を差し込む方法をとれば省けます。
専用プリント基板を作る場合、感光基板を利用しても1000円〜3000円ぐらいかかります。もちろん、インクジェットプリンタ代は含まれません。
4.ソフトウエア
4.1開発に必要な物
Windows PC(パソコン)
AVR Studio 4 (*1)
WinAVR (*2)
AVRISP mkII等のプログラム書込み器、もしくはSDカードブートローダの書込まれたATmega328P
*1: Atmel社のサイトからダウンロード可能 (Link)
*2: sourceforge.netからダウンロード可能 (Link)
4.2 フローチャート
文書ファイル:FlowChart.numbers
■燃費計算 ...V0.2と同じ
燃料を使用するのは、エンジンだけなので、燃料噴射量の積算で、使用した燃料量を算出します。燃料噴射量の値がダイレクトに車両から得らなかったので、以下の方法で推量しています。内燃機関工学の知識が全くなく、私の勝手な考えです。 理想燃焼混合比を使うという発想は、Wikipediaより得ました。
調整率はECU(エンジン制御装置)が、車両の動きや効率的に動く様に動的に変えてくる部分です。私は、空燃比補正値という項目がそれに当たるのではないかと想定し計算する事にしました。
HA7では、吸入空気流量値も直接得られませんでしたので、以下の方法で推量しています。
空気密度の計算方法は、Wikipediaより得ました。また、吸入管圧力[atm]は車両から得られる情報が[kPa]単位なので単位変換が必要、質量[g]からガソリン容積への変換は、ガソリンの密度の一般値783[kg/㎡]を用いたのも同様です。
この計算方法が正しいかどうかの検証は出来ていません。ガソリン満タン法での実測で14[km/l]程度の燃費に対し、本ソフトウエアでは平均14[km/l]を表示しましたので、大きく違ってはいないものと思われます。
4.3 ソースコード
ソースファイル一覧 モジュール関連図
文書ファイル:ModuleRelation.numbers
■ダウンロード
ライセンス: フリーソフトウエア(GPL v3)
作成者:富樫豊彦 tog001@nifty.com
開発環境:
Windows2000 SP6 / VMware Fusion 3.1.3 / Mac OS X 10.6
CadSoft Computer EAGLE 5.11 Light Edition for Mac
AVR Studio 4.18.700
WinAVR 20100110(GCC 4.3.3)
AVRISP mkII
5.実装
5.1 基板
出来れば、小さなLCD画面と同じサイズに収めたいので、専用プリント基板を作りました。CADツールはEAGLEを使っています。回路図もEAGLEで作っており、そのまま回路情報を引き継げるというか、連動するので部品変更するのが楽です。部品ライブラリは、ほとんどEAGLE標準品を使っていますが、SDカードソケット、LCDモジュール、圧電スピーカはプライベートライブラリTOG.lbrに登録して使ってあります。EAGLE標準ライブラリは整理されていない寄せ集め的な状態なので、大変探しにくいのですが、大体有ります。プロジェクトファイルは回路図を参照下さい。
なお、大事な事が一点。SDカードソケットは表面実装用に作られていますが、小さくまとめるために、少し浮かして半田付けする方法にしています。
SMD部品を使わないと収まり切らないかもしれないと思っていましたが、丁度入ってしまいました。ただし、LCD接続の部分が2mmピッチで、そのピン間を貫通するラインがあり、かなり細かいアートワークとなっています。
最終的にPDFを作成し、それを感光基板現像用の専用インクジェットフィルムに印刷します。パターンが細いので、縦横とも2000dpi以上のインクジェットプリンタが必要です。最近の家庭向けの写真印刷目的でも、コストダウンのせいか仕様を満足しない事が多いので注意が必要です。ビジネス用のものは意外とダメですね。
これは、フィルムを窓ガラスに貼って乾燥させている時の写真です。隣りんちの白壁・窓が見えます。
実際販売されている感光基板のサイズは色々有りますが、私が良く利用するのは100mm×150mm×1.0mmの物で、これに色々な種類の基板パターンを敷き詰めてムダを少なくしています。今回は、他の小物用の基板を作るついでに、試作用に1枚だけ入れて現像しました。万一の為に2枚取る事が多いのですが、多分パターンミスがある事を予想して、1枚だけ入れました。結果的には、珍しく一発でOKでしたので、2枚取っておけば良かったと後悔しています。
左が組み立て完了しATmega328Pを乗せる前の状態。右の写真は、LCDモジュールのテストプログラムを書込んだ328Pを差し込み、あっさり動いてしまった状態。ここ迄でも、色々確認しながら作業を進めていますが、普通はこんなに簡単に動かないものです。
次に、基板の入出力テストプログラムを作って328Pに書込み、正しく機能するかの確認を行いました。全く問題ない様です。プログラム書込み用のISPコネクタは、今回付けていないのでプログラム変更は328Pを差したり抜いたりする必要があり、大変面倒です。ハードウエアは大丈夫そうなので、この辺で、SDカードブートローダを書込んでおきます。これで、HEXファイルを格納したSDカードを差し込んで、リセットをかけるだけでプログラム変更が出来る様になります。
LCDとの接続線を短くして、両面テープで基板に固定したら、最終形に近くなりました。プログラム開発も順調です。以前、同じATmega328Pの汎用的に使える様にした基板を作りましたが、その半分のサイズになってしまったのは嬉しいのやら悲しいのやら。やはり、目的がはっきりしている専用設計にはかないません。
5.2 ケース
出来るだけコンパクトにしたかったので、アクリル板で専用のケースを作成します。
側板(保護紙が付いている)と正面(透明)と背面(黒)の3枚。使った素材はこれだけ。切り出しはプラカッターで切れ目をいれて折る。切断面は棒ヤスリ、紙ヤスリを使って所定のサイズに近づけながら、まっすぐ綺麗にして行きます。右の写真は、曲げ加工が終わり、正面パネルを接着する前の状態。サイズが現物合わせに近いので、上下左右向きが決まってしまうため、黄色いテープで向きが分る様にしておきます。曲げるのは、棒ヒータを使いますが、一発勝負なので、中々難しいです。何回もやれば慣れるのですが、何個も作る訳ではないので、いつも緊張します。実際、1枚作り直すはめに陥りました。十分に熱を加えて曲げ、直角・長さをよく確認して微調整します。熱を低めにすると表面の荒れが少なくなりますが、微調整出来なくなりますので、その辺の加減が難しいのです。
正面は、プッシュボタンの5mm穴を開け、5mmアクリル棒を差し込みます。飛び出た部分はカットします。背面パネルは、開閉出来るように虫ピンでヒンジを作ります。3mmアクリルシートに1mmドリルで横から穴を開けるので緊張する作業です。アクリル板にヤスリを使うと、粉まみれになり大変取れにくいのですが、中性洗剤で水洗いすればキズを付けずにきれいな状態に出来ます。
単三電池と比べると、こんな感じです。
車両への取付けは、携帯電話等に使う滑り止めゴムが良好です。位置を色々変えてみる事が出来、ちょっとやそっとでは外れる事も無い様です。カーショップや100円ショップ等で安く入手出来ます。
<開発情報>
<関連>
「自作電子小物/HA7車両情報データロガー/iPhone版0.5」
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「自作電子小物/HA7車両情報データロガー/Mac版0.2」
「自作電子小物/HA7車両情報データロガー/Mac版0.1」
<あとがき>
バージョン0.1〜0.2はこれを開発する為の確認として作った物で、バージョン0.3が本来欲しかった形です。四六時中記録するには、安い、専用の小物が必要と考えたので作りました。 数値をちら見するので、当初からHUD化を考えていましたが、光学部分での集光発火の可能性等の問題を解決し切れず諦めました。こんな事なら最初から、表示器がもっと大きい3〜4インチ画面の物を使えば良かったと反省しています。
昨今の自動車の燃費の良さには驚かされます。15km/l以下の自動車はかなり後ろめたさを感じるようになりました。元々、デカくて重い車は好きではありませんが、軽自動車の全てが燃費が良いとは限らない事も実感しています。平成元年式のAT軽自動車の燃費と、初代マツダロードスターの一般走行燃費がほぼ同じでした。新しい車は、高燃費でCO2の発生を減らせる事が出来きますが、製造時発生CO2量を考えれば単純な話でもないようです。スポーツEVが出たら買い替えようと思っていたのが20年以上前。まだまだ時間がかかりそうなで、目下の所、化石燃料の絶対的な使用量を減らす為に、走行距離を減らす(安易に車両を使わない)のと、このメータを見ながら楽しく燃料効率を上げて行ければと思っています。
富樫 豊彦 tog001@nifty.com
Simple fuel efficiency meter and
vehicle data logger for HONDA's light weight truck GBD-HA7.