自作電子小物/HA7車両情報データロガー/Mac版0.2
自作電子小物/HA7車両情報データロガー/Mac版0.2
HA7 logger mini V0.2
2012年2月12日日曜日
ホンダの軽自動車 アクティ トラック用の、PCを利用した簡易的なデータロガー/レコーダ・ソフトウエアです。V0.1より画面表示を中心に改善した物です。車両との接続は、車両診断コネクタ(OBD2/ISO9141-2)へ、自作のUSB接続アダプタをつなぐ形です。ソフトウエアはMac OS Xの開発環境Xcode(Cocoa)にてコーディングしています。
<機能/特徴>
■一番安い・一番単純な自動車用データロガー
■データはCSV形式ファイルで利用範囲が広い
■動作中はリアルタイムで見やすく表示される(運転しながら見てはいけません)
■汎用部品で製作容易
重要:誤動作した場合、車両の暴走等で生命の危険に及ぶ可能性があります。
注意:全ては車内にあるコネクタが、OBD2仕様であるという想定を元に開発しています。メーカが仕様開示している訳ではないので、得られる情報は正しいとは限りません。電気的な接続で通信を行いますので、車両・PC共に物理的・ソフトウエア的な故障につながる事もあり得ます。これは、全くの無保証の元に提供する情報/ソフトウエアです。
<仕様>
名称:HA7 logger mini V0.2
分類:車両データ記録器(PCオンライン型)
取得データ項目:
エンジン冷却水温度 ect[℃]
短期空燃比補正値(バンク1) shrtft1[%]
長期空燃比補正値(バンク1) longft1[%]
吸入管絶対圧力 map[kPa]
エンジン回転数 rpm[rpm]
車速 vss[kn/h]
点火時期 sparkadv[°]
吸気温度 iat[℃]
スロットル開度 tp[%]
O2センサ出力電圧(バンク1センサ1) o2s11[V]
空然比補正値(バンク1センサ1) shrtft11[%]
<以下、画面表示のみの項目>
吸気流量[g/s]
噴射燃料量[g/s]
移動距離[km]*1
使用燃料量[l]*1
瞬間燃費[km/l]*1
平均燃費[km/l]*1
*1の項目を除き最大最小のピークホルド表示有り
取得時間間隔:
2秒(項目間は0〜1.8秒程度の時差があるが、周期はほぼ2秒間隔)
接続形態:
車両:
対応車種:HONDA ACTY TRUCK GBD-HA7(2006年式)のみ
接続方法: グローブボックス下のOBD2コネクタへの接続
PC:
対応機種:Apple社Macintosh(SSD搭載のノート型を推奨)
対応OS:Mac OS X 10.6以降
ソフトウエア:専用ソフトウエア”HA7 logger mini” + FTDI社提供USBドライバ
対応プロトコル:ISO15031-5(SAE J1979) の ISO9141-2 の 5bps初期化式 のみ
出力ファイルフォーマット:テキストCSV形式(例)
ファイル名:デスクトップ上に”HA7.csv”を作成(常に追記されます)
接続アダプタ:
USB側:mini-B
車両側:OBD2コネクタ(ISO15031-3, SAE J1962)
電源:車両およびPC側より供給。
外形:幅約5cm、奥行約2cm、高さ約1cm
製作費:約1500円ぐらい
<技術的なポイント>
■ソフトウエア
・開発環境はxcode、フレームワークはCocoa
・FTDI社D2XXドライバインタフェースで、ISO9141-2(5bps初期化式)プロトコルを実装
・ISO15031-5(SAE J1979)フォーマットの解釈
■開発法
・プログラム開発は、無料で利用出来るApple社の標準的なIDEであるxcodeを使用
<接続アダプタ>
接続USBアダプタはV0.1の物を使用します。詳しくはこちらをご参照下さい、
<ソフトウエア>
■ダウンロード
インストール:特にインストール作業はありません。任意の場所に置いて下さい。
FT232RLドライバソフト:
実行するには、USBアダプタ用のドライバのインストールが必要です。
ダウンロード:FTDI社のホームページのD2XX Driversから最新版をダウンロードして下さい
インストール:説明書に従いターミナルからインストール作業が必要です。
(FT232RL用のVCPドライバとの共存は出来ませんので、アンインストールしておいて下さい)
■使い方
次の手順で実行の準備を行います。
(1)Mac上のFT232RL VCPドライバのアンインストール(VCPドライバが既に入っていた場合のみ)
詳しくはFTDIのホームページを参照
(2)Mac上にFT232RL D2XXドライバのインストール
詳しくはFTDIのホームページを参照
車両との接続順番については、特に制限はありません。PC側ソフトウエアは常に接続をリトライしていますので、条件が揃えはデータを収集し始めます。
表示画面レイアウト
実際の走行時の動画です(収録日2012.2.20寒い冬の朝、コールドスタートから5分間約1km)
画面更新頻度の低さ、徐々にクーラント温度が上がって行く様子や、エンジン始動前の吸気圧がほぼ大気圧100kPaになっている事、回転数と車速からギヤチェンジのタイミングが分ったりします。
太い針が現在値、細い針がピーク値でメータパネルをクリックするとリセットできます。
移動距離「Distance」、使用燃料量「Used fuel」はプログラム起動時にリセットされます。
特に操作の必要がなく、自動的に接続を試行し、車両からの情報が得られると表示・記録します。
「Logging」のチェックを外すと、 ログファイルを出力しなくなります。
「Connect」のチェックを外すと、車両との接続を止めます。
出力CSVファイル
■ソースコード
ライセンス: フリーソフトウエア(GPL v3)
作成者:富樫豊彦 tog001@nifty.com
開発環境:
Mac OS X 10.6.8
Xcode 3.2.6
■通信プロトコル・接続インタフェースについて
詳しくはV0.1の情報をご参照下さい、
■燃費計算について
燃料を使用するのは、エンジンだけなので、燃料噴射量の積算で、使用した燃料量を算出します。燃料噴射量の値がダイレクトに車両から得らなかったので、以下の方法で推量しています。内燃機関工学の知識が全くなく、私の勝手な考えです。 理想燃焼混合比を使うという発想は、Wikipediaより得ました。
調整率はECU(エンジン制御装置)が、車両の動きや効率的に動く様に動的に変えてくる部分です。私は、空燃比補正値という項目がそれに当たるのではないかと想定し計算する事にしました。
HA7では、吸入空気流量値も直接得られませんでしたので、以下の方法で推量しています。
空気密度の計算方法は、Wikipediaより得ました。また、吸入管圧力[atm]は車両から得られる情報が[kPa]単位なので単位変換が必要、質量[g]からガソリン容積への変換は、ガソリンの密度の一般値783[kg/㎡]を用いたのも同様です。
この計算方法が正しいかどうかの検証は出来ていません。ガソリン満タン法での実測で14[km/l]程度の燃費に対し、本ソフトウエアでは平均14[km/l]を表示しましたので、大きく違ってはいないものと思われます。
<関連>
「自作電子小物/HA7車両情報データロガー/iPhone版0.5」
「自作電子小物/HA7車両情報データロガー/iPhone版0.4」
「自作電子小物/HA7車両情報データロガー/SDカード版0.3」
「自作電子小物/HA7車両情報データロガー/Mac版0.1」
<あとがき>
前回の小物で車両との接続は簡単な事が判ったので、一般的な機器を利用出来そうだと思われましたが、なかなか難しかったです。PSP等のゲーム機では、メーカは自作ソフトの開発を推奨していないので素直に断念。iPad等のタブレット型PCは画面が大きく、取付もしやすいので最適なのですが、USBホスト機能がなかったり、車内の環境条件が厳しかったり、そもそも勿体ないので、これも断念。やはりマイコンベースの電子小物しかないと思いました。
燃費計算がうまく行くかどうか不安だったので、とりあえずソフトウエアだけを改良して、計算が正しいか数値を見てみる事にしました。本当の事を言えば、こんなに簡単に数多くのセンサ情報を得られてしまうので、プログラム改良にはまってしまったのが事実です。パネル設計はもっと時間が欲しい所、楽しいです。履歴表示機能も付けたいです。しかしながら、PCは車両搭載・運用性が悪い事を考えれば、実用的な小物になり得ないので、程々にしておきます。
富樫 豊彦 tog001@nifty.com
Simple vehicle data logger for HONDA's light weight truck GBD-HA7.