自作電子小物/電力インジケータ/テーブルタップ0.6.5
自作電子小物/電力インジケータ/テーブルタップ0.6.5
Wh meter V0.6.5 Feel Power strip+
2016年2月29日月曜日
見た目には普通のテーブルタップですが、ランプの色で使用している電力を見る事ができる小物です。無線通信で、計測値を出力する機能も持っていますので、4チャネルの簡易的な交流電圧計・電流計・電力計として使用する事もできます。製作費は約5000円位、電圧・電流センサに抵抗器を、制御部にマイクロチップ社のPIC32MXを使用し、ソフトウエアはC言語にてコーディングしています。
なお、本小物は実験目的であって、商用電源で使用する事を認可された物ではありません。
左から、30W半田ごて、ノートパソコン、タブレット、携帯電話を接続しています。
青系の涼やかな色は少ない電力を、赤の温暖系になるに従い、多くの電力を消費している事が、感覚的につかめるようにしています。赤になったら限界値に近い事を表し、オルゴールが鳴りだします。
詳しい数値データは、スマートフォンやPCで確認する事が出来ます。
<機能/特徴>
■普通のテーブルタップと何ら変わらない、直感的に使用量が判る
■許容量オーバ、火災に結びつく事象時には警告音が鳴る、しつこく鳴る、でも電源切断はしない
■電圧・電流・電力値をBluetoothでデータ送信、負荷・供給側の変動状況をリアルタイムで確認出来る
■10年分の電力量データロガー機能を持つ(日・チャネル単位)
■単純、安価、製作容易、補正作業不要
<仕様>
名称:電力インジケータ付テーブルタップ
分類: 単相交流、多チャネル、電力表示ランプ、簡易電力量計、無線データ転送
タップ数:4(チャネル)個別スイッチ付
電源条件:単相交流125V以下 50または60Hz
許容量:合計1.5kW、15Aいずれかの少ない方
測定方法:本テーブルタップを使って消費機器の電源接続を行う
表示機能:
スイッチ部分が光るインジケータ:瞬間電力値で色が変ります
計測範囲:〜11.5[A]/チャネル
計測方法:サンプリング、50Hzの場合5サイクルで500回、測定間隔は約0.5秒
数値精度:-10%〜+10%
警告機能:合計が1kW(変更可能)を越えたら、オルゴール(曲名:ねこふんじゃった、速い)が鳴る
リアルタイムデータ出力機能:
出力先:小電力無線データ通信規格のBluetooth(アトリビュートプロトコルまたはRFCOMM)
データ項目:日時、(電力[W]、電流[A]、電圧[V]、周波数[Hz]、月間電力量[Wh]、日間電力量[Wh])×4
出力間隔:1秒
データ表示例:
スマートフォンにサンプルアプリをインストールして表示。(アトリビュートプロトコル使用)
パソコンの基本ソフトのみでの表示例。(RFCOMM使用)
ペアリングして仮想シリアルポートにアクセスすると、続々とデータが表示されます。
togashi-toyohiko-no-MacBook-Air:Documents togashitoyohiko$ cat /dev/tty.WHM065-SerialPort
"2016.02.27 13:13:03", 0.1,0.08,101.3,50,1.9,0.5, 0.1,0.08,101.2,50,5.2,3.1, 1.8,0.14,101.3,49,8.8,3.1, 0.1,0.08,101.3,49,8.2,2.8
"2016.02.27 13:13:04", 0.1,0.08,101.3,50,1.9,0.5, 0.1,0.08,101.2,50,5.2,3.1, 1.8,0.14,101.4,50,8.8,3.1, 0.1,0.08,101.4,50,8.2,2.8
"2016.02.27 13:13:05", 0.1,0.08,101.3,50,1.9,0.5, 0.1,0.08,101.3,50,5.2,3.1, 1.8,0.14,101.2,50,8.8,3.1, 0.1,0.08,101.3,50,8.2,2.8
"2016.02.27 13:13:06", 0.1,0.08,101.3,50,1.9,0.5, 0.1,0.08,101.3,50,5.2,3.1, 1.6,0.14,101.2,50,8.8,3.1, 0.1,0.08,101.3,50,8.2,2.8
"2016.02.27 13:13:07", 0.1,0.08,101.4,50,1.9,0.5, 0.1,0.08,101.3,50,5.2,3.1, 1.6,0.14,101.3,50,8.8,3.1, 0.1,0.08,101.3,50,8.2,2.8
データロギング機能:
保存先:内蔵不揮発性メモリー
データ項目:日付、日間電力量[Wh]×4
出力間隔:1日毎、毎日0時00分00秒に記録
最大蓄積量:10年間、2016年1月1日〜2025年12月31日
出力先:Bluetoothアトリビュートプロトコルでアクセス
補助機能:
Bluetoothアトリビュートプロトコルで以下の設定値を変更可能。
日時、色と電力値の対応、警告電力値、警告音の種類、ランプの輝度
本小物自体の電源が切れた場合、電力量/積算データが失われますが、最大1時間分に抑えられます。
Bluetooth RFCOMMで電圧・電流波形データを取得可能。グラフは表計算ソフトで表示したもの。
CH3,AGND,V,I1,I10,I100
0,539,677,557,524,467
1,538,704,520,544,473
2,539,727,521,545,489
3,538,746,572,511,493
4,535,768,553,526,503
5,540,787,510,564,507
6,537,808,519,547,518
7,541,831,570,512,526
8,541,845,557,530,536
9,537,856,510,569,543
10,541,876,524,554,551
11,537,887,574,519,555
12,536,900,553,529,552
外形:幅215mm、奥行44mm、高さ33mm
重量:約300g
電源:AC100V 1W未満
製作費:約5000円
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-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_ 設計書 _-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_
この小物を再現するのに必要な、設計の結果情報です。
目 次
1. 技術的なポイント
1.1 ハードウエア
1.2 ソフトウエア
1.3 開発法
2. 回路図
3. 部品表
4. ソフトウエア
4.1 開発に必要な物
4.2 ソースコード
4.3 接続仕様
4.4 フローチャート
5. 製作
5.1 基板
5.2 ケース
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1.技術的なポイント
1.1 ハードウエア
・Microchip Technology社のPIC32MXマイクロコントローラ
・電力の計測
シャント抵抗器による交流電流の計測
分圧抵抗による交流電圧の計測
サブ1W〜1kW測定レンジを確保する為、オペアンプによる差動増幅と並列増幅回路
単電源での負信号の扱い(仮想アナロググラウンド方式)
多チャネル対応はアナログマルチプレクサの使用
PIC32MX内蔵のA/Dコンバータの使用
・非絶縁回路
・コントローラを内蔵したRGB-LEDの使用
1.2 ソフトウエア
・プログラミング言語はC、開発環境はMPLAB X、コンパイラはXC32(GCC)
・Microchip提供ソフトウェア標準ライブラリ群(Harmony)の利用
・有効電力計算、電圧・電流RMS計算
・A/D変換をハードウエア割込+ソフトウエアの組み合わせで定期実行
・タイマ割込でカレンダ時計の実装
・コントローラ内蔵RGB-LED用の特殊制御信号の生成
・タイマ割込+PWMでオルゴール機能の実装
・積算値の維持、FLASHをEPROMとして利用
・自家製Bluetoothソフトウエアスタックを利用し、BLEでiPhoneとの連携
1.3 開発法
・回路模擬検証は、無料で利用出来るLTspiceを使用
・回路製図は、無料で利用出来るCadSoft Computer社のEAGLEを使用
・ソフトウエア開発は、マイクロチップ社純正開発環境を使用
・コンパイラもXC32の無料モード(最適化-O1まで)で使用
2.回路図
3.部品表
文書ファイル:V0_6_5_parts.numbers
線材を除きます。
4.ソフトウエア
4.1開発に必要な物
PC(MPLAB Xが動作する環境、Windows, Linux, Mac等が可)
ソフトウエア
MPLAB X (*1)
XC32 (*1)
MPLAB Harmony 1.06 (*1)
PICkit等の書込み器
*1)無料で利用できます。Microchip社のサイトからダウンロードして下さい。
4.2 ソースコード
(1)ダウンロード
MPLAB Xプロジェクトファイル:
スマートフォン(iPhone)側サンプルアプリケーション
xcodeプロジェクトファイル:
ライセンス: フリーソフトウエア(GPL v3)
作成者:富樫豊彦 tog001@nifty.com
開発環境:
Mac OSX 10.11
MPLAB X IDE v3.20
XC32 v1.40
MPLAB Harmony v1.06.02
Pickit3
xcode 7.2.1
(2)ソースファイル一覧
文書ファイル:Source file list.numbers
(3)モジュール関連図
文書ファイル:ModuleRelation.numbers
4.3 接続仕様
(1)Bluetooth RFCOMM(仮想シリアル通信)
“WHM 0.6.5”の名前のデバイスをペアリング。(OSX10.11の例)
特に確認応答は無いはずですが、聞かれたら「0000」を入力。
CSVフォーマットです。データ項目は、
1 日時
2 CH0電力[W]
3 CH0電流[A]
4 CH0電圧[V]
5 CH0周波数[Hz]
6 CH0月間電力量[Wh]
7 CH0日間電力量[Wh]
8 CH1電力[W]
9 CH1電流[A]
:
文字列は”Nr”の形式で、Nはチャネル番号で0~3のいづれかを指定します。
OSXの「ターミナル」の場合、もう1画面開いて、echoコマンドで指示するのが楽です。
波形データは、A/Dコンバータから取り込んだ生の数値となります。
CSVフォーマットです。
CHx : シーケンス番号(0~99)
AGND: アナロググラウンド値
V : 電圧センサ値
I1 : ×11倍電流センサ値
I10 : ×110倍電流センサ値
I100: ×1100倍電流センサ値
(2)Bluetooth ATT(Attribute Protocol)
iOS用のアプリケーション「LightBlue」でのスクリーンショットです。
サービス名は「WH Meter 0.6.5」。
サービスのUUID、アトリビュートのUUIDは、これら値を使用しています。
文書ファイル:WHM0.6.5 ATT データフォーマット.numbers
4.4 フローチャート
文書ファイル:SoftwareModel.numbers
おおむね、上記の様な機能分担でソフトウエアが作られています。
利用したライブラリのHarmonyが、イベントループ構造(system_task.c参照)を前提としていますので、それに習ってアプリケーション処理をループの中に組み入れる形です。
イベントループ構造とは、処理を行う必要があろうが、なかろうか必ず繰り返し制御が渡ってくるプログラムの構造です。これは、仮想的にマルチタスク/マルチスレッドを実現する為の、1手段です。
注意すべきは、制御が渡ってから長時間CPUを占有せず、細切れに処理を行う等の工夫が必要になります。
文書ファイル:FlowChart.numbers
5.実装
5.1 基板
大した回路ではないので、蛇の目基板にて作成可能です。
5.2 ケース
市販、テーブルタップに回路基板を内蔵させますので、内部スペースに余裕がある製品を探します。もし、見つからないのであれば、USB電源が付いている製品が改造しやすいかも知れません。
今回使用した製品は、ちょうど良いスペースが開いている上、スイッチの中にネオンランプが入っていますので、LEDへの入れ替えするだけで、良好な視認性を得られます。
スイッチの端子台を利用し、電流センサであるチップ抵抗を付ければ改造も楽です。旧バージョンでは、バスバーを切断して、その間にチップ抵抗を取付けていましたが、コンセントの抜き差しを繰り返した結果、応力で抵抗器が破損、焼損してしまいました。新バージョンでは改善すべきてんでした。
具体的には、スイッチから3つの端子が立っていますが、ネオンランプを取り払った関係で、1つは使われない状態になっています。そこと中間の端子との間が、丁度チップ抵抗の長さが合いますので、ハンダを盛って取付けます。なお、事前にバスバーは取り外しておいて下さい。(そのまま利用する手もあります)最後に、ネオン用の端子台すべてを100Vラインに結線して完了です。
左の写真はメイン基板の取り付け状況。ケースにピッタリ収まるように、基板の形を加工しています。
右の写真は電源基板を被せた状態。プラスチック板で浮かせ二階建てで固定しました。
< 開発情報 >
<関連>
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※時系列順
<あとがき>
これは、6年前に製作した小物の再設計品です。当時どうしても諦めざるを得なかった設計上の選択枝が、時間とともに解決出来るようになり、かつ、オリジナルが故障/廃棄した事と、便利さを知ってしまうと後退出来ないヒト科の性、これが今回の「Feel power strip+」を生み出しました。無線接続により感電の心配をなくし、スマートフォン活用により時刻設定の不便さも解消、LEDのチラツキも無く、かつ全体的に安定しています。ただ、コストの面では改善とはなりませんでした。前作で使用したPSoCは大したデバイスだったと思います。
2016.3.7: 使うのが面倒だと言う事も無くなり、たくさん製作するのも苦ではないレベルなので、家中のテーブルタップを置き換える事を画策しています。ベースとなるテーブルタップに、なかなか良い物が見つからなくて困っています。
富樫 豊彦 tog001@nifty.com
The "Feel Power Strip" is the watt indicator with a bluetooth.