自作電子小物/温度・湿度データロガー/SDカード版0.2
自作電子小物/温度・湿度データロガー/SDカード版0.2
Thermo hygrometer SD logger mini V0.2
2012年5月21日月曜日
屋内環境用の温度・湿度・気圧・照度データロガーです。データはメモリーカード「SDcard」に日時とともにCSV形式で記録されます。タバコ大のサイズで、電源の無い所でも、独立して1年の連続記録が出来ます。表計算ソフトで推移をグラフ化したりといった使い方も可能です。V0.1よりは製作し易い様に、もっと安くなる様に考え直しました。補正不要なデジタル式センサを、マイコンにATMEL社のATmega328Pを使用し、ソフトウエアはC言語にてコーディングしています。
■携帯も可能な小型・軽量な本体で、単四アルカリ電池3本で約1年間記録し続けます
■測定は一定時間間隔で行われ、SDカードに自動記録、本体画面には最新値が表示されます
■バックライト付きなので暗い場所でも表示が見えます
■測定精度は良くないので、簡易的な物です
■比較的入手しやすい部品で安価・校正作業不要
<仕様>
名称:「簡易」温度・湿度・気圧・照度データロガー
分類:環境温度・湿度・気圧・照度記録計(メモリーカード型)
計測間隔:1秒、10秒、1分、10分、1時間のいずれか
サンプル数:1(1回の計測のサンプル数)
データ項目:
日付、時刻:(年月日時分秒、表示に年はありません)
温度:-40.0~105.0[℃] 0.1℃単位
湿度:20~90[%RH] 1%単位、±5%、温度が0~50℃時のみ有効
気圧:500~1150[hPa] 1hPa単位、±10hPa、温度が-20~80℃時のみ有効
照度:0~600[lx] 1lx単位
表示項目:データ項目に加え、計測間隔、SDカード挿入状態、バッテリー状況
対応外部記憶メディア:micro SD card 2GB以下
ファイルシステム:FAT12もしくはFAT16
FAT32等は不可、SDアソシエーションが提供するユーティリティ、SDフォーマッターで初期化して下さい
データ形式:CSV(カンマ区切りテキスト、行末コードはCR/LF)
ファイル名:計測間隔により異なる
1秒間隔 :”yyyymmdd.CSV” 1日毎にファイルが作られます
10秒間隔:”yyyymmdd.CSV”
1分間隔 :”THyyyymm.CSV” 一ヶ月毎にファイルが作られます
10分間隔:”THyyyymm.CSV”
1時間間隔:”THyyyy.CSV” 一年毎にファイルが作られます
既にファイルがある場合は追記されます
最大蓄積量:
使用するSDカードの容量または約5000万サンプル以下。
80byte/サンプル、例えば2GBのSDカードで1秒間隔にした場合、約9ヶ月分
外形:幅46mm、奥行78mm、高さ22mm
重量:約100g(電池込み)
電源:単4型乾電池×3本
動作時間: 約1年(アルカリ電池で1分間隔計測時の計算値)
製作費:約3000〜5000円ぐらい(ケースと、AVR書込み器、PCやインクジェットプリンタ等の基本的な開発環境を含みません)
本体表示画面:
Date: 西暦年月日
Time: 時分秒
Interval: 計測間隔[秒]
Altitude: 標高[m] 海抜0mの気圧に換算したい場合入力
LCD Off: 電池節約の為の画面表示停止迄の時間[h]
Contrast: 画面の文字の濃さを変える
END: 通常画面に戻る時に右+左ボタンを同時に押す
出力ファイル例:
表計算ソフト(Apple Numbers)での取込みとグラフ化例:
<使い方>
1.電池セット
背面のパネルを開いて単四型の乾電池を3本セットします。
乾電池はマンガン、アルカリどちらでも構いません。
充電池でも動作はしますが、過放電保護されませんので、お勧めしません。
使い掛けの電池を入れると、起動しません。必ず新品の電池を用意してください。
2.時刻設定
右を押しながら左ボタンを押してセットアップ画面を出して下さい。
右(橙)ボタンで反転表示されている数字が一進みます。右ボタン押し続けるとリセット値に戻ります。
左(黒)ボタンで項目が次に移ります。
ENDの位置で右を押しながら左ボタンを押すと、通常表示に戻ります。
右ボタンを押し続けると再起動されます
3.記録開始
SDカードを挿入すると自動的に記録が開始されます。
セットアップ画面中は、記録は行われません。
4.表示操作
右ボタンでバックライトが光り、暗い場所でも画面を確認出来ます。
左ボタンで表示画面が切り替わります。
照度が0ルックスの場合、自動的に表示が消えます。ただし、ボタン操作を行う間だけは表示されます。
連続12時間表示した時も自動的に表示が消えます。
照度が1ルックス以上になったら自動的に表示再開します。
5.記録終了
SDカードを抜くと自動的に記録が停止します。
書込み処理中に抜くと、ファイルシステムが壊れる事が有りますが、PCで修復する事が可能です。
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<設計書目次>
1.技術的なポイント
1.1 ハードウエア
1.2 ソフトウエア
1.3 開発法
2. 回路図
3. 部品表
4. ソフトウエア
4.1 開発に必要な物
4.2 ソースコード
4.3 モジュール関連図
5. 実装
5.1 基板
5.2 ケース
1.技術的なポイント
1.1 ハードウエア
・Atmel社のATmega328Pマイクロコントローラ
・デジタル湿度センサDHT11 - 独自1線シリアル接続
・デジタル絶対気圧センサMPL115A - I2C接続
・照度センサ用のフォトトランジスタNJL7502L - アナログ、A/D変換
・白黒グラフィックLCDモジュールLPH7366(PCD8544) - 独自4線シリアル接続
・マイクロSDカード - SPI接続
・圧電スピーカの単純直接駆動
・32,768Hz時計用水晶の低電力動作
・消費電力削減目的のセンサ類電源のコントロール
1.2 ソフトウエア
・プログラミング言語はC、開発環境はAVR studio、コンパイラはWinAVR(GCC)
・ソフトウエアでDHT11との通信インタフェースを実装
・ソフトウエアでDHT11との通信インタフェースを実装
・ROMサイズ削減のため、MPL115の補正計算をint型、整数演算だけで実装
・I2Cマスタの簡易制御サブルーチン
・グラフィックLCDをキャラクタLCDのように扱えるサブルーチン
・タイマ割込でカレンダ時計の実装
・独自SDカードライブラリを利用しCSVデータを追加書込み
・printf()の出力先をLCDへリダイレクト
・ビープ音をソフトウエアで出力
1.3 開発法
・プログラム開発は、無料で利用出来るAtmel社の標準的なIDEであるAVR Studioを使用
・回路とプリント基板設計は、無料で利用出来るCadSoft Computer社のEAGLEを使用。
2.回路図
Eagleプロジェクトファイル:V0_2R0_PS04.sch
Eagleライブラリファイル:TOG.lbr
各部品を結線しているだけという単純な回路で、何も考えていない様に見えますが、こうなるよう考慮した結果です。アナログ的な回路部分がほとんど無いので、難しくはないと思います。注意したのは、消費電流のコントロールです。主要部品の電源を完全にカット出来る様に、コントローラのPC3で直接電源供給する形にしました。
R7, R8, R9はシリアルバスのプルアップ抵抗ですが、結線が短く、通信速度が100kHz程度であればATmega328P内部のプルアップ抵抗でも要件を満たせます。実機でも入れていません。
C1, C2は使用するクリスタルのスペックによって省略する事が出来ます。今回使ったクリスタルでは仕様の範囲が微妙でしたが、省略してみました。
3.部品表
文書ファイル:V0_2_Parts.numbers
基板、 線材、ケースを除きます。
入手困難なのは3.6V低自己消費型ボルテージレギュレータですが、 湿度センサDHT11は3.3Vでも特に問題は出ていませんので、そのまま使用しています。(資料によっては3V〜使用可能と書かれていたり、5Vないと精度が出ないとの情報もあるようで悩ましい所です。とにかく本体ラベルに書かれている定格を優先して信じます)
入手しにくいのは DHT11, MPL115A2, LPH7366です。互換品はありません。しかしながらインターネット上で複数のショップで見つけられましたので何とかなると思います。
この部品表はSMD(表面実装部品)を使う前提で考えてあります。その為、専用プリント基板を作る必要が有ります。感光基板を利用しても+1000円〜3000円位はかかります。また、パターンが細かいので、2000dpi級の高精細のインクジェットプリンタが必要となります。
4.ソフトウエア
4.1開発に必要な物
Windows PC(パソコン)
AVR Studio 4 (*1)、WinAVR (*2) もしくは Atmel Studio 6 (*1)
AVRISP mkII等のプログラム書込み器、もしくはSDカードブートローダの書込まれたATmega328P
*1: Atmel社のサイトからダウンロード可能 (Link)
*2: sourceforge.netからダウンロード可能 (Link)
4.2 ソースコード
ソースファイル一覧
文書ファイル:SourceList.numbers
■ダウンロード:
IDE: AVR Studio 4系
IDE: Atmel Studio 6系
コントラスト調整、CSVファイル分割、初期バッテリチェック機能追加
ライセンス: フリーソフトウエア(GPL v3)
作成者:富樫豊彦 tog001@nifty.com
開発環境:
CadSoft Computer EAGLE 5.11 Light Edition for Mac
AVR Studio 4.18.700 + WinAVR 20100110(GCC 4.3.3)
Windows2000 SP6 / VMware Fusion 3.1.3 / Mac OS X 10.6
ATMEL Studio 6.2.1502 SP1 + Atmel AVR(8bit) GNU Toolchain 3.4.5.1522(GCC 4.8.1)
WindowsXP SP3
AVRISP mkII
4.3 モジュール関連図
文書ファイル:ModuleRelation.numbers
5.実装
5.1 基板
専用プリント基板にしています。
Eagleプロジェクトファイル:V0_2R0_PS04.brd
Eagleライブラリファイル:TOG.lbr
外形は72x40mmの片面基板で、銅箔面がディスプレイ面となりSMD部品が乗り、反対面にリード型の部品が乗る形です。ジャンパ線は不要に出来ました。
製作には、高い精度のハンダ付け技術が要求されます。
(1)感光基板での製作方法
この記事では、感光基板と言う、マスクフィルムで感光・現像で作った皮膜のパターンを作り、基板上の銅箔を溶液で溶かし出す手法を使った、製造方法を使います。直接、基板に皮膜を作るプリンタがあれば楽なのですが、まだ一般的ではありません。
感光基板自体は、ホビー向け感光基板の大手、サンハヤト社が提供する「クイックポジ感光基板 NZシリーズ」を使用する例です。基板の厚みは1.6mmと1.0mmの2種類から選べます。昔は、基板と言えば1.6mmと決まっていましたが、小物のようなサイズ感では厚過ぎます。今回は、1.0mmで行きましょう。その他に必要な材料は、フィルム、現像剤、エッチング液、フラックス液、絶縁コーティングスプレーです。工具は、ドリルの歯、ピンバイス、プラカッター、紙ヤスリ、棒ヤスリです。
(a)マスクフィルム作成
とても細かいアートワークになりますので、精度の良いプリンタと、注意深く感光・エッチングを行う必要が有ります。
プリンタは、比較的安価なインクジェット式の物か、ゼログラフィ式(レーザプリンタ)の選択になります。 以前、 OHP用のフィルムを流用出来る事から、レーザプリンタを使って製作していましたが、サンハヤトの感光基板がモデルチェンジした際、失敗の連続を経験しました。原因は、フィルムの紫外線の透過率の違いで、明示しているような市販のOHPフィルムがない事と、良好なフィルムがあったとしても、同じ製品がまた入手可能か断定出来ない等もあり、やはり安心して製作するには、フィルムもサンハヤト社製品を使うしか選択肢は無いと考えました。現在、サンハヤト社ではインクジェットプリンタ用のフィルムしか供給していません。
よって、インクジェットプリンタを使用して、サンハヤト社の「インクジェットフィルム PFシリーズ」でマスクフィルムを作ります。
これがインクジェットプリンタで印刷したマスクフィルムです。
印刷面を基板に密着させたいので、反転印刷して下さい。
売られている感光基板のサイズ(この例では150x100mm)内に、ムダのないよう、幾つも詰め込んでいます。向きを変えているのは、エッチングした時の溶けムラがで出た場合でも、救われやすいようにと考えた工夫です。関係ない基板分のパターンも入っていますが、最大限、高価な感光基板有効活用したいが為理由です。
今回の場合、パターンの細かさは要注意で、普通のインクジェットプリンタでは、潰れてしまうかも知れません。実際に、手持ちのプリンタで試してみて下さい。つぶれる場合は、DPI値が高いプリンタを購入する必要があります。私は2400DPIの製品(HP Photosmart D5460)を愛用しています。
(b)感光
失敗したかどうかは、エッチングするまでは判りませんし、実際失敗の多くはこの工程ですので、慎重に行って下さい。何回か失敗する事は避けられませんので覚悟して下さい。予算に余裕があるのでしたら、サンハヤト社が販売している露光用品を使えば安心です。
作業自体は単純で、感光基板にマスクフィルムを乗せて、光を当てるだけです。フィルムと基板は密着させるのはもちろんですが、印刷面が基板に付く形にしないと、パターンのエッジがぼけまくります。また、光とは言う物の実際は紫外線で露光するので、白熱電球では露光しにくいのに注意が必要です。太陽光を使う手もありますが、お勧めしません。安定した紫外線を得る事は簡単ではありません。向きは当然調整する物としても、快晴と薄曇りではまるで光量は違いますし、季節によって紫外線量が変動する事は、天気予報でお判りになるかと思います。
私の使っている方法を紹介しますと、平らな所に、感光基板・マスクフィルム・ガラス板の順に乗せて、上から電気スタンド(蛍光灯)で露光します。高さ・露光時間は、経験による所が大きいですが、高さ10cm、40W蛍光灯、5分間から始めて見てはいかがでしょう。
感光したかどうかは、目視でははっきりと判りません。(何となく変わっているかなあ?という感じです)
(c)現像
すぐ、現像液に浸します。現像剤粉を水で溶く時、冬場に作業する場合には、ぬるま湯を用意して下さい。入れたとたんに、ゆっくり溶け出す様子が見て取れます。ただ、パターンがはっきり現れる訳ではなく、やはりぼんやりした感じの皮膜です。5分以内に溶け終わらない場合には失敗したと考えてください。ただ、多めに現像しても、溶けすぎになる可能性が低いようです。
終わったら、触らないように水洗いして下さい。
液は、また後で使います。
(d)エッチング
エッチング液に浸すと、すぐ現像で皮膜が取れた部分の色が赤黒く変わり、銅箔が溶け出します。揺すりながら溶けるのを促進させましょう。腐食が進むと肌色に変わって来ます。冬場のように温度が低いと溶けにくくなりますので、作業前に湯煎で人肌に暖めておくのも手です。新液で10分位で溶け切るのが目安です。浸ける時間が多ければ多い程、パターンを浸食(細くなって行く)していきますので、細い部分、残っている部分を見比べながら引上げるタイミングを見計らって下さい。
引上げたら、大量の流水でエッチング液を洗い流します。触ってはいけません。エッチング液は銅を溶かす程強い酸化液ですので、排水パイプに流すと、どの様な結果になるのかは想像安いです。本来なら、洗い流すのもためらわれる行為で、実際注意しないと、流し台に腐食の跡がいたるところについてしまいます。
エッチング液はもう使いませんので、元の保存容器に戻しておいて下さい。また、別の機会に使えます。
これは、失敗例です。角に溶け切らない部分があるのが見て取れます。中央部分のパターンが切れるまでエッチングしての結果なので、感光ムラが出た物と考えられます。電球型蛍光灯を使ったのが敗因だと思います。
問題を改善、再度トライして、きれいな物が出来るまで粘りましょう。
これが、成功例です。
(e)感光皮膜の除去
前の写真で、少し黄緑がかっているのは、まだ感光皮膜が残っている為です。
これを取らないと、ハンダ付けで来ません。
昔は、金たわしでゴシゴシ磨き取っていましたが、パターンが細かいので、すぐ千切れてしまいます。今は、再現像して取り除く方法を使います。
マスクフィルムを乗せずに、全面紫外線を十分に当てて、再度現像剤に浸せば、全部とけ出すという作戦です。
現像剤は、保存しておいて後で使う事も出来ますが、前述のように現像の程度が目視出来ませんので、何回まで使えるかの判断がしきれません。失敗するまで使ってみるというのも、感光基板と現像剤の値段を比べたら、考えられない手です。素直に、廃棄してしまいましょう。
ピカピカの銅箔パターンは、いつも感動です。
乾燥させてフラックスを塗っておきます。これをしないと、10円玉のように酸化して汚くなってきます。ハンダ付けの乗りが良くなる効果もあります。
左側が一番厳しい気圧センサ部分のパターンです。切れる寸前なので、現像し過ぎか、エッチングしすぎですね。やり過ぎでした。以前の「ポジ感光基板」では、現像した直後の時点でパターンの露光状態が色が変わるので確認出来ましたが、新しい「クイックポジ感光基板」目では肉眼でははっきり判らないので、露光が悪いのか現像が悪いのか、どちらが悪いのか判断出来ないのが嫌な所です。
右側は、この写真を撮る時の状況。USB顕微鏡のように見えますが、そんな高価なものは使っていません。拡大鏡(単眼鏡に付属のレンズを付けた物)を使い、画が暗いので懐中電灯で照らしながら、接眼レンズ側からデジカメ覗いて撮影しました。マクロ撮影の10倍位の絵が撮れました。
(f)切り取り
出来た基板を、目的のサイズに切り分けます。使用する工具はプラカッター。割れ目を入れる程度にして、手で割ってしまいます。
所定のサイズにならなかった場合、縁を紙ヤスリに擦り付けて、削り取って調整します。ついでに、角も丸めて手に優しくしておきましょう。
こんな感じになります。
(g)穴開け
SMD(表面実装部品)は穴開けの必要が無いので、穴開け数は少ないです。
穴開けするポイントは、ちょっと見にくいかもしれませんが写真を拡大して確認して下さい。
基本、0.8mmの穴です。私は、正確な穴開けをし易いピンバイスを利用しています。大体、丸いパターンの所を開けて行けば良いのですが、プッシュスイッチとATmega328Pは穴開け不要(無理矢理表面実装します)です。10箇所位開けるだけなので簡単,簡単。
フォトトランジスタ用の窓の穴を5mmで開けます。いきなり5mmで開けると基板が割れる可能性が高いので、小さいサイズから少しづつサイズアップして何回も穴開けして行くと割れにくいです。
LCDモジュールは、位置決めの穴が2つありますが、1.2mmの大きさにして下さい。また、爪が掛かる部分を棒ヤスリ(角もしくは平)で窪み作ってやります。この辺りは、実物を実際はめ合いながら調整して加工して下さい。この時に、信号線の接触部分がきちんと合う位置になるようにして下さい。位置決め穴を正確に開けてあれば、問題ないはずなのですが、一応確認しておく事で、後々のトラブルを回避出来ます。
(2)部品実装
基板に部品をハンダ付けして行きます。
かなり細かい作業ですので、始めるにはちょっとした覚悟が必要かと。
薄くて強力な両面テープが必要になって来ますので用意しておいて下さい。
必要な工具は、半田ごて、ピンセット、拡大鏡(虫眼鏡)等です。
部品は混ざると区別出来ないものがありますので、作業直前に袋から出した方が良いでしょう。
一番難しい部分であるLGAパッケージの気圧センサを、まず一番先にやってしまいます。
なぜ難しいかというと、小ささもさることながら、端子が裏面にしか無いので、ハンダを流し込む必要がある為です。
先に部品と基板の接触部分をハンダで少し盛っておきます。
テープで仮固定しておかないと、ハンダ付けで来ません。かなり小さいので手がぷるぷるですが、何とかなります。
写真のように、テープで部品を動かないようにして、脇から半田ごてで足のパターンを加熱します。想定としてはハンダが吸い込まれてつながってくれる事を期待しています。付いてないようならハンダを追加して流し込んでやります。うまく付いたかどうかの確認は拡大鏡での目視確認しか出来ませんが、テスターを使ってハンダブリッジ等でショートしていないかどうかの確認はしておいた方が良いでしょう。
ちなみに、テープは糊が残りにくいもので作業性も良い、Scotchの建築塗装用マスキングテープを良く使っています。
残念ながら、この方法では、1台目は大丈夫だったものの、2台目の製作時にうまく半田付け出来ていませんでした。以下、リカバリ作業の例です。
仕方が無いので、何とか基板から取り外しましたが、物理的に壊れてしまいました。パッカリ開いちゃったんです。勿体ない事に、もう使えません。中はこんな風になっているんですね。
ダメであれば、もう一つの方法を使います。部品に細いワイヤーを取り付け、基板に結線する作戦です。
細いワイヤーは、普通のヨリ線を利用します。先に、部品側にワイヤーをハンダ付けします。
電線を曲げカットし、小さいDIPのように仕立てます。
あとは、基板に半田付けして下さい。このとき、ハンダ付けする足の根元側をピンセットではさみ、熱を逃がすようにして下さい。でないと、部品側のハンダも溶けてワイヤーが取れてしまいます。
ちょっと浮いた感じになります。浮かせすぎると、ケースに接触するので程々に。
ここから先は、一気に部品を組み付けて行っても良いのですが、トラブルを回避しやすくするように、チェックポイントを設け、動作させながら確認しながら組立てて行く作戦で行きたいと思います。
①電源周りから組み付けて行き、安定化された電圧が出力されている事を確認
②SDカードからブートする事を確認
③画面表示される事を確認
④後は全部装着して最終形にする
ステップ① 電源周りから組み付けて行き、安定化された電圧が出力されている事を確認
ボルテージレギュレータIC2、C5、C6をハンダ付けし、電池ボックスを取り付けます。
電池ボックスは、強力両面テープで基板に貼付けます。秋月電子で扱っている物は、強度的に弱く時間が経つとエビゾってしまうので、がっちり固定しておきます。
写真ではSDカードソケットが付いていますが、後でも問題ありません。
電池を2本装着し、3本目の間にDMMで電流を測るように接続してみます。
大電流が流れるようなら、すぐ外し、ショートの原因を探ります。
ほとんど流れていなければ、普通に電池をセットしなおし、IC2のOUT側に3.3Vが出ている事を確認します。
ステップ② SDカードからブートする事を確認
先んじて、LEDの点灯確認だけしておきます。LEDとR2をハンダ付けします。LEDは金属端子がある方が基板面です。出来るだけ基板の縁によせて、光がやや斜め上を向くようにした方が良いでしょう。
電池をセットして、写真のようにワイヤーでショートさせると点灯するはずです。(ハンダ付けする程でもない)
確認を終えたら、電池は外しておきましょう。
問題なければSDカードソケットを取付けます。大事な点が一つあり、ソケットの金属部分と基板パターンとの接触があります。基板設計する時には判っていましたが、パターンの取り回し上、どうしても逃げられない部分でした。対処としては、基板に薄いセロテープを貼付けて接触しないようにして下さい。ハンダ面を回避してうまく加工して下さい。はめ合いは全く問題ありませんでしたので、ずれないように正確にハンダ付けして下さい。
ブレッドボードで動く事が確認出来ているATmega328P、もしくは予めSDカードブートローダが書込まれているものを用意します。
足の細い部分を全て切り取り、基板に位置がずれないようにしてハンダ付けします。両隅のピンを先に付けて行くと、補正もききますし失敗が少ないと思います。
これで、最低限ブートローダが動く回路になりましたので、電池を入れてみます。
正常ならLEDが点灯します。全く点灯しなければ、ブートローダが機能していません。
次に、M328P.HEXファイルを格納したSDカードを用意し、ソケットに挿入して電池を入れ直してみましょう。
ゆっくり点滅するならば、プログラム書込みが動いている、正常な証拠です。
点灯して、すぐ消灯するならば、何らかのエラーが発生しています。
ステップ③ 画面表示される事を確認
<写真なし>
C3,C4,C8、クリスタルQ1をハンダ付けし、LCDモジュールを取付けます。
電池を装着すると、正常ならバックライトLEDが5回点滅し、起動メッセージ「TH_SDlogger0.2....」と、センサーエラーのメッセージがLCDに表示されます。
ステップ④ 完成
残りの部品を全て、取付けて完成。
電池を装着し、全て正常な動作かどうかを確認します。
起動時に、バックライトが点滅、ビープ音が高低の組みで、5回繰り返され、起動メッセージが画面に現れます。すぐ、計測値の画面に切り替わります。
・大きな、数値差が無い事を確認
・右ボタンを押すと、時刻が変化する事を確認
・左ボタンを押すと、画面が切り替わる事を確認
良ければ、問題ないと思われます。
基板にコーティング加工を施す事をお勧めします。長期使用には、フラックスだけでは不十分です。
具体的にはサンハヤトの絶縁コーティング剤「ハヤコート」をパターン面に吹き付けておくと、劣化を少なくする事が出来ます。注意すべきは、絶縁材が入り込んでは困る部分には、マスキングしておく必要があります。今回の場合、SDカードの接点、気圧センサの窓、スイッチの接点、LCDの接点だと思われます。
5.2 ケース
専用の自作ケースです。
素材はアクリル板と一部パンチングアルミ板を使います。
アクリル板は2mm透明、3mm黒、3mm乳白色(好みで)で、3mm幅ぐらいの三角棒も使います。
他に文字入れ用のインスタントレタリングと、つや消しクリアスプレーを用意して下さい。
必要な工具は、プラカッター、アクリル用曲げヒーター、アクリル用接着剤、紙ヤスリ、棒ヤスリ、ドリル、ニッパ、定規、直角定規、またノギスがあると正確さが増します。
寸法図。
左は、アクリル板を切り出したもの。プラカッターで切っただけ。
右は、側板は、アクリル加工専用ヒータを使って曲げます。2台欲しかったので、2個作っています。正確に直角に曲げるのは結構難しいものです。向かい合う部分を接着し、切断面を紙ヤスリに擦り付けて、面を出して行きます。中々でない場合は、目の粗い平棒ヤスリで出っ張った部分を削り出すと作業が楽です。綺麗な角が出てくると、ただのアクリル板からケースに変わってくるので、何となく嬉しくなります。
通気口の穴開けは、3mm位の穴をたくさん開け、ニッパで穴をつなげて大きくして、後は棒ヤスリで仕上げます。金ノコで切っても良いいかと思います。
上面パネルを接着、底面パネルのヒンジ加工が済んだ所です。
網の部分は、パンチングアルミ板を使います。柔らかいので、切って曲げるのは雑作も無い事です。
取付け用に、アクリル三角棒を通気口の切断面に接着しておきます。透明な棒なので判りにくいですが、写真で確認してみて下さい。ここにアルミ板を接着します。面倒なら、側面全体を覆うようにしてしまえば、工作は楽だと思います。
作業中は、キズが付きにくいように、マスキングテープを全面張っておくと良い仕上がりになります。
上面パネルの文字入にインスタントレタリングを転写し、はがれ落ちないように、上からつや消し塗装を行い、完成近い状態になりました。塗装前に、表示窓・照度センサ部分はマスキングしておきます。なお、透けすぎるようなので、内側にもつや消し塗装が必要でした。
<開発情報>
<関連>
「 自作電子小物/温度・湿度データロガー/SDカード版 0.1」
<あとがき>
3年前に製作したバージョン0.1の改良版です。世間はPSoCの敷居が高いようなので、もっと手軽に作れる構成にしたいと思っていました。
安く、校正作業を無くし、取り付き易いマイコンの一つ「AVR」の選択をしてみました。単なる部品(モジュール)の単純な組み合わせで、工作としてはつまらないと思いますが、目的達成出来る事に変わりは有りません。
その後:
DHT11は個体差が大きいというか、劣化が大きいというか、心配だった電源電圧の条件による物なのか、急激な温度・湿度変化にさらしたからダメージを受けたのか、安定した湿度値を出さない個体が出ます。信頼出来るデータシートがないし、かの地の製品だからという訳でもないのですが、機会があれば品種を変えて改良したいですね。
2015.01.24:
2年遅れで、やっと2台目を製作しました。おかげで、再現するのに必要な情報を整理する事が出来、このページに反映する事が出来ました。中身のの事は解らなくとも、同じ物を再現させる事は出来るようにしたつもりです。やっぱり気圧センサ MPL115A のハンダ付けは、難易度最高レベルです。秋月電子通商からDIP変換基板に乗った
大気圧センサモジュールが出ておりますので、これを利用する事をおすすめします。
富樫 豊彦 tog001@nifty.com
The simple Thermometer, Hygrometer, Barometer, Illuminometer with memory card data logger.