自作電子小物/PC20データーロガー/SDカード版 V0.3
自作電子小物/PC20データーロガー/SDカード版 V0.3
PC20 SD logger V0.3
2010年8月22日日曜日
「PC20 SD logger」はDMM(デジタルマルチメーター)のSANWA PC20にデータ記録機能を追加します。PC20背面にタバコ箱大の「小物」装着する事で、計測データを長時間SD Cardに蓄積でき、後でパソコンに数値データを取り込みできます。ケーブルなどは一切ありませんので扱いが楽です。
バージョン0.3は、より安く済む様にアトメル社のAVRマイコンで再設計したものです。また、複数台使用時に問題となる、日時同期を簡単に出来るようにしました。
PC20は三和電気計器株式会社が販売する、PC連携機能を持つ一番ベーシックなモデルです。
<機能/特徴>
■測定場所、時間を選ばない
■SDカードを差し込んでおけば、常に記録される
■充電池を使用する事でランニングコストを抑えられる
■部品数がきわめて少ないので簡単に作れる
<仕様>
名称:PC20 SD logger
分類:DMM測定値記録器(メモリーカード型)
対応機種:SANWA PC-20 / PC20TK
対応メディア:SD card(変換アダプタでmini, microも可能)
消費電流が約30mAを越える場合は、アルカリ乾電池を使って下さい
データフォーマット:
ファイルシステム:FAT16または12、フォーマット済である事
データ形式:CSV
ファイル名:固定”/PC20.csv”、既にファイルがある場合は追記
データ精度:PC20仕様と同一
サンプリング回数: 約3回/秒(PC20のデータリンク出力仕様に従う)
デー他項目:年月日時分秒、AC/DC、数値、単位(秒は小数点が付く)
最大データ量:使用するSDカードの容量により制限、例えば2GBのSDカードで約5000万件・180日分
時刻設定:SDカード内の設定ファイルで日時データを設定、または他のPC20 SDloggerと対向させ日時情報を転送
設定ファイル仕様:
ファイル名:固定 “PC20.txt”
フォーマット:1行1パラメタ
yy=年(西暦年4桁)
mm=月
dd=日
hh=時
mi=分
ss=秒
外形:縦75mm、横42mm、高さ18mm
電源:単4型、乾電池または充電池×3本
動作時間:400時間程度(計算値 モデルSDカード:書込10mA、アイドル=30μA、充電池:800mAh)
製作費:1000〜3000円
注意事項: 三和電気計器株式会社様とは全く関係がありません。ご迷惑を掛けてしまいますので、問合せなど絶対しないで下さい。
<技術的なポイント>
■ハードウエア
・Atmel社のATmega328Pマイクロコントローラ
・赤外線RAWデータ受信・送信(非変調)
・32,768Hz時計用水晶の低電力動作
・バッテリの過放電防止対策
■ソフトウエア
・プログラミング言語はC、開発環境はAVR studio、コンパイラはWinAVR(GCC)
・タイマ割込で無手順シリアル受信の実装
・タイマ割込でカレンダ時計の実装
・独自SDカードライブラリを利用しCSVデータ追加書込みとパラメタファイル読込み
■開発法
・プログラム開発は、無料で利用出来るAtmel社の標準的なIDEを使用
・プログラム書込み器は、AVRISP IIを使用
・回路とプリント基板設計は、無料で利用出来るCadSoft Computer社のEAGLEを使用。
<おおまかな設計>
■全体構成
そもそも、データロガーと言うと電圧・電流・抵抗・温度・湿度・圧力・日射・加速度・角速度等など、物理現象を時系列に記録する事を言うと思いますが、測りたい対象毎にロガーを求めるのは高くつきます。そこで、電気関係に的を絞り、よく計測するのに使うDMM(昔はテスターと呼んでいた)をそのまま利用し、データ記録部分を外付けで実現するというアプローチを考えて見ました(1秒以下のデータを取りたい場合は話は別です)。これは、正確な計測を行う回路を自作するのは校正・安全対策・信頼性等難しい部分があり、コスト・時間共に覚悟しなければならないと考えた為です。
データ出力機能を持つDMMを物色してみると、安く入手しやすく製品としても安心なSANWAのPC20に目を付けました。これなら、複数台購入する事も十分可能な価格帯です。
DMMのデータを利用したいとなると、次の様な方法が考えられます。
・計測データを即時プリントし、後で利用する。
・オンラインでPCに接続してデータを取込む。
リアルタイムの分析が可能 → 調査レスポンス向上
PCとセットなので、計測場所に困る事がある
・オフラインでデータを蓄積し、後でPCに取込む。
計測場所、時間が自由
取込み操作が必要
複数台同時に計測する場合、データの時系列同期が面倒
研究室のように、測定場所が限られればオンライン型が断然便利です。しかし、私が思っている使用状況は屋外で、長時間連続した測定なので、オフライン型で検討を進めたいと思います。
■PC20光リンク
PC20は赤外線で計測データを送信し続けています。特に出力の操作は必要なく、背面から無条件に出力し続けています。人間の目では見えませんが、デジカメ等では次の写真のように薄紫色で写りました。PC20のLCD表示に「RS232C」と常時表示されていますが、たぶんこれが出力ステータスと思われます。これを、赤外線センサで受けて処理する方式とします。
右の写真は、赤外線フォトトランジスタの出力をオシロスコープで見た波形です。
通信仕様については後述。
■記録
記録するデータ量は20バイト/レコード × 3回/秒なので、1日間のデータ蓄積を考えると、6MB以上の記憶装置が必要です。アクセス時間は17ms/Byte以下。現在利用出来るデバイスは、
・EEPROM 扱い安いのが1Mbit以下で、128kByte/400円程度
・FLUSHチップ 制御に多ピンが必要
・メモリカード 容量問題なし、SDカードなら入手容易で値段も安い、2GByte/1000円程度、ブロックアクセスドライバ・FAT機能要
・USBメモリ 容量問題なし、入手容易で値段も安い、2GByte/1000円程度、USBホスト・MSD・FAT機能要
・磁気ディスク 容量は全く問題ないが、消費電力とサイズ、対衝撃性の面で難あり
選択するとなると、現時点ではメモリカード、それもSDカードに軍配が上がります。
■時計
計測データには時刻を付けたいので時計機能が必要です。できれば、相対時間よりも絶対時間「日時」の方が扱い易いと思われます。そのため、DMMの電源がオフ・小物の電源が切れていても時計が止まったりしないようにしなければなりません。
■電源
PC20自体が乾電池で動くので、本小物もバッテリ駆動が前提と考えます。高稼働を想定し、ランニングコストを抑えられる充電池(二次電池)で考えます。
・汎用品 単三、単四形 NiCd/NiMH 外部の充電器を使用
・内蔵型 タブ付セル、角パック NiCd/NiMH/Li+ 充電回路を用意する必要あり
汎用品に対応しておくと、乾電池も使えますし、充電回路が不要に出来ます。
内蔵型は、Li+(リチュームイオン)セルだとかなり小型に出来ます。
私的には、小型化のメリットにひかれるものの、高エネルギー密度であるが故のLi+の取扱の難しさ(充電が悪いと発火、大きな応力で爆発等)に引っかかり、自作機器には、まだ使う気になれません。汎用品、特に現時点では入手性からNiHM(ニッケル水素)型の物を選択したいと思います。
<詳しい設計>
■赤外線受信
PC20から発せされる赤外線信号は、赤外線が出ていれば0を、出ていなければ1を表しているデジタル信号の様です。赤外線出力量(光量?)は小さいので、遠くに飛ばす事は難しいと思いますが、本来の目的はアタッチメントとの間の通信を行う為の物でしょうから、非常に短い距離(数ミリ)での情報伝達が出来る程度の仕様になっているのは理解出来ます。実際試してもると、汎用的な赤外線フォトトランジスタ(東芝TPS611を使用)でも簡単に電気信号に変換できました。以下に、試行錯誤的に調べた、通信仕様を示します。(sanwa社から正式に出ている仕様ではありません※)
物理層:
メディア:赤外線(940nm前後?)
変調:なし(外線が出ていれば0、なければ1を表現)
回線数:1
リンク層:
転送速度:2400bps
同期方法:非同期(スタートビット0×1+データビット×8+ストップビット1×1)
転送方向:片方向のみ(PC20→外部機器)
転送制御:フロー制御なし、エラー訂正・送達確認なし、要は垂流し
流れてくるデータは、単純にPC20に表示されているセグメント(エレメント)をビット表現し、約1/3秒毎のLCD更新の度に14バイトの通信データに乗せて転送されて来ます。詳しいフォーマットは「PC20データーロガー/mac版」を参照して下さい。
既に、過去の小物で受信実績があるので、何の技術的問題も課題もありません。
※2012.1.20追加:通信仕様はsanwa社ホームページで公開されていました。よくあるご質問(技術)→No.19→参考URLでPDFがダウンロード出来ますので、公式なこちらを参照する様にして下さい。
■赤外線送信部
TLN110互換品(類似品)のOPTOSUPPLYのOSI5FU5111Cを使って、5mAで大体同じ位の出力だと思われます。
■SDカード制御
アクセス仕様は「SDアソシエーション http://www.sdcard.org」が標準化しており、概略版が公開されています。それに従って実装すれば実現は可能ですが、簡単な物ではありませんし、ディスク装置の様な扱いの為、記録フォーマットは、通常FATファイルシステムとなるので、これも処理出来る様にしなければならず、かなり敷居が高いのが現実です。
安くはないのですが、SDカードI/Oモジュールでハードウエア的に解決する方法もあります。通常はマイコン製造メーカが提供、もしくは先人が開発したライブラリ(サブルーチン)を利用するのが楽です。アクセス速度性能/大容量を求めなければ、シリアル通信のSPIでSDカード内のデータを読み書き出来ますので、がんばれば自分で作れそうです。
今回は、既に独自開発していた「 簡易SDカードサポート」がありましたので、これを利用します。毎秒3回程度の処理速度なら、十分対応できます。
■RTC部
リアルタイムクロック、カレンダ時計機能の事ですが、前バージョンでは相対時刻で時間を表現していました。やはり絶対日時の方が、後でデータを管理する時便利・楽ですので、何とかRTC化したいと考えていました。
面倒なのは、常にカウントを続けているので常時電源が必要な所と、日時の初期設定です。バッテリ使用が前提ですので、出来るだけ少ない電流でカウントする必要もあります。
専用ICがありますので、これで解決する事も可能ですが、若干のコスト(セイコーインスツルS-35390A/¥90三共社、 エプソントヨコムRTC-4543SA/¥250秋月電子)がかかります。低電力動作可能なマイコンであれば、このコストを抑えられますので、こちら側を検討してみました。
多くのマイコンでは32.768kHzクリスタルを使ったRTCの実装が可能になっています。今回、ターゲットとしたATmega328Pでも、Timer/Counter2とSleep-powersave-modeを使い、数μAの消費電流で1秒を刻む事が可能です。
次に、日時の初期設定についてです。いくつかの方法を考えてみました。
手入力:プッシュスイッチ等の入力と、設定値確認用の表示器等を付けて、日時を入力出来る様にする。複数台ある場合は、同期させるのが難しい。
ファイル設定:メモリカード内に日時データを書込んでおき、差し込んだ時点で設定される方法。追加のハードウエアが不要。
対向同期:二台を対向させ、赤外線データリンクで日時を同期させる方法。1台は他の方法で日時設定する仕組みが必要。ハードウエアは赤外線LED追加するだけ。
放送波受信:JJY(標準電波)、GPS、地上デジタル放送の電波を受信し、その中に含まれる日時情報を得る方式。
PC有線接続:PCをドッキングステーションに見立てて、有線で日時情報を供給してもらう。物理的な線はUSBが適当。PC側のソフトウエア開発が必要。充電やオンライン型データ転送機能と言った広がりを持たせられる。
PC無線接続:無線LAN、Bluetoothと言った、通常PCに付いている無線インタフェースを利用し、日時情報を供給してもらう。PC側のソフトウエア開発が必要。小物側がコスト的に厳しい。
携帯赤外線:携帯電話には、赤外線インタフェースが装備されている事が多いので、これを利用し日時情報を供給してもらう。携帯電話側のソフトウエア開発が必要。追加のハードウエアが不要。
コスト的にはファイル設定、USB接続、携帯赤外線しかないと考えます。USBについては、実は既に考えを進めており、V0.4として出てくるかもしれません。携帯赤外線が面白そうなのですが、さわりだけ調べてみると機種がかなり特定されてしまうみたいですので、とりあえずパス。結局、ファイル設定になってしまいますが、複数台同期させるのが面倒なので、対向同期を組み合わせする事にしました。うまく使えば、時刻情報を引き回す事が出来きます。
■表示部
動作(書込み)している事を示す、単純なステータス表示だけで良いので、LEDランプを使用する事とします。ただ、エラーも表示したいので、小型のRGB-LEDを使えば割安に出来ると考えました。
状態と表示の関係は次の様にします。
エラー発生:赤色
カード書込:青色
データ受信:緑色
バッテリ駆動前提と、さほど明るさは必要ないので、最低限の電流値にしたいと考えました。そこで、手持ちの表面実装RGB-LEDのLATBT66Bを実際に光らせてみて確認してみました。1mAでも光りははっきり判り、3mAでは確認用としては十分な明るさでしたので、中間の2mAで設計します。
電源電圧とVF値が近いので、直列抵抗で電流制限すると設計誤差が大きくなりますが、ばらついても色が違うので目立たないでしょう。データシート上は2mAでのVF値が明示されている訳ではないで、実測時にVF値も記録しておき、これで抵抗値を計算しました。でも、20mA条件値で計算しても大きくは変わらないですね。
■制御部
この小物がしなければならない処理は、非同期シリアルデータを受信し、フォーマット変換してSDカードに書込むだけという、そう難しいものでは無いので特に指定品種はありません。アナログ入出力も全く使いません。
ただ、SDカードアクセスの為のライブラリは、ROM/RAMメモリ容量を多量に使用するので、これが制約になっています。簡易SDカードサポート/AVR版が使用メモリ量が少なくて済むので、今回ROMサイズ/コストが良いATmega328Pを使う事にしました。ROMが16kBのATmega168でも大丈夫なのですが、価格差が小さいので機能追加上の余裕を持たせた選択です。
■電源部
必要な仕様は次の通りです。
・3.3V/最大100mAを回路に供給
・単三もしくは単四型NiMH充電池を使う
・電源は常にオン、可能な限り自己消費を少なく
・充電池の過放電を防止する
PC20の背面に付けられるような小型にしなければならないので、単3なら2本、単四なら3本しか入りません。直列接続の場合、1.2V×2本=2.4V、1.2V×3本=3.6Vから3.3Vを作り出す必要があります。
3本+ボルテージレギュレータの場合、LDOタイプを使ったとしても、電圧差0.3Vでは無理だと言わざるを得ません。もう1本増やすか、乾電池など別のバッテリ品種を検討する必要があります。自己消費はC-MOSタイプで10μA級の入手し易い物がありますので問題はないのですが。
昇圧型DC-DCコンバータの場合、コスト高になり無負荷時でも100μA級の電流が出てしまうので、バッテリの持ちと良く相談していく必要があります。
結局、データシートとにらめっこで、トレックスセミコンダクタ社のボルテージレギュレータXC6202/3.3V品のドロップ電圧が0.2〜0.28V/30mA、0.67〜0.9V/100mAなので、余裕少かつ仕様を制限してしまいますが、これを使う選択にしました。「SDカードの消費電流が約30mAを越える物は使えない事がある」という条件が付きます。バッテリがフル充電の場合、1セル1.4V位出る事が多いので、消費電流の大きいSDカードでも最初は使えると思います。
この辺りを安心したいのであれば、昇圧型DC-DCコンバータで入手し易いHT7733を検討すれば良いのですが、部品数が増えてしまうので見送りました。
一応、コスト面での比較を示します。バッテリ本体を入れても、特に高くなるものでもありませんでした。最初の構成は入手しにくい部品となりますので、1つだけ作るのでは割高です。サンプル品で部品を入手する手もあるのでしょうが、量産する訳ではないので、メーカの迷惑になるでしょうから節度を持って止めておきます。
過放電防止は、MOS-FETのカットオフ電圧(データシートにはVGS(off), VGS(th)等と表記されている)を利用して、バッテリの電圧が設定を下回ったら、電流が流れない様にします。発想としては単純ですが、都合良いFETが無いのがネックです。VGS(off)値もさることながら、個体差の幅が大きい品種ばかりなので探すのが大変です。なお、分圧抵抗等で調整しても良いのですが、僅かですがバイアス電流を流さなければならないので、放置すればいつか過放電してしまうので要注意です。
今回使用したFairchild Semiconductor FDS6612Aは、この様な用途に使用するのはそぐわない勿体ないものです。VGS(th)=1.9Vなので、各バッテリセルの使用条件が同じとするならば、1セル当り0.63Vでカットされる事を期待しています。残念な事に、VGS(th)=1〜3Vの個体差がありますので、最悪0.33Vまで落ちないとカットされなかったり、1Vでカットされてしまったり(こちらは問題無し)する場合もあり得ます。もっと良い品種が、きっと何処かにあるんじゃないかと日々探しています。
■バッテリ持続時間
希望的な仕様は以下の通りです。
・稼働1000時間 PC20の電源が入っており、ロギングしている状態
・待機3年 SDカードが挿入されているが、PC20の電源が入っていない状態
逆算で、この小物の消費電流を計算すると
DC-DCコンバータのような、電力変換を行っていませんので、簡単にするためバッテリと機器内電圧を3.3Vと統一します。
バッテリ=800mAh
稼働時電流=800mAh/1000h=0.8mA
待機時電流=800mAh/(3年*365日*24h)=30μA
実際、この希望に出来るものか試算してみました。
稼働時は上記表の通り、平均1.7mAと予測できますので、残念ながら希望の半分以下です。しかし、SDカードの書込みを10mAとした前提で、これがほとんどを占めますので、SDカードの省電力次第で持続時間が決まるという事です。
待機時は、SDカード自体が90μAも使ってしまうので、希望の1/3、せいぜい1年間しか持たないという結果となりました。これも、SDカード次第です。
という事で、設計仕様は次の通りにします。(モデルSDカード:書込10mA、アイドル=30μA)
・稼働400時間 PC20の電源が入っており、ロギングしている状態
・待機1年 SDカードが挿入されているが、PC20の電源が入っていない状態
その後の実績で、2010年8月〜2011年8月の1年間運用してもまだ使えています。待機は問題なしでした。
<回路図>
SW1とSDカードのDO信号線には通常プルアップ抵抗が必要ですが、この回路ではATmega内部の物を利用します。ただし、DET信号(カード検出)は、内部のプルアップ抵抗は使いません。この信号は、ほぼアクティブ状態なので可能な限り少ない電流になるような高抵抗にしたかった為です。それでもカードが入っていれば3.3μAは流れてしまいます。
<部品表>
細かいので、クリックして拡大して下さい。
電池、基板関係、ケース、送料/交通費を除きます。
合計1000〜3000円です。これに充電池600円、プリント基板作成に1000〜2000円、ケースに1000円と言った感じです。
SDカードソケットは、手持ち部品の関係から逆向きの物を使いましたが、通常品(DM1A)の方が使う時自然だと思います。充電池を使う場合は、 長期間使う物なので、エネループのような自己放電の少ないものが良いでしょう。
<ソフトウエア>
■開発に必要な物
Windows PC(パソコン)
AVR Studio 4 (*1)
WinAVR (*2)
AVRISP mkII等のプログラム書込み器
*1: Atmel社のサイトからダウンロード可能 (Link)
*2: sourceforge.netからダウンロード可能 (Link)
■ソースコード
C言語にてコード化しております。本体のソースファイルは PC20_SDlogger03.c のみです。PC20_SDlogger03 にローカルなサブルーチンや割込ルーチン等、全てのアプリケーションコードが記述されています。
データ受信と、時計カウントは割込を使っていますので、メインループは100ステップ程度の簡単なコードで済んでいます。すいません、設計時のメモしかありません。その内、整理するかもしれませんが、直接ソースコードを読んだ方が早いと思います。
<ダウンロード>
ライセンス: フリーソフトウエア(GPL v3)
作成者:富樫豊彦 tog001@nifty.com
開発環境:
Windows2000 SP6 / VMware Fusion 3.0.2 / Mac OS X 10.5
CadSoft Computer EAGLE 5.6 Light Edition for Mac
AVR Studio 4.18.700
WinAVR 20100110(GCC 4.3.3)
AVRISP mkII
参考:「SDカードブートローダ」も作りましたので、これを書込んでおくとプログラム変更がSDカードから行える様になります。
<基板>
部品数は多くないのでなので、蛇の目基板でも十分作れると思いますが、専用プリント基板を作ってしまいました。マスクパターンをPDFで作ってありますので、スケールに注意すればそのまま使えると思います。
基板設計ツールは、Cadsoft社のEAGLE(フリーソフトウエア版)を利用しています。二層で設計していますが、一層目をジャンパ線にすれば片面でもいけます。
EAGLEは操作に多少クセがあります。慣れれば回路設計からプリント基板設計まで連動していますので、何度でも手戻りする事が出来るので、設計作業が楽です。私は、論理的な回路を考える時から使い出し、ブレッドボードでの動作確認をしながら、最終的な回路確定までEAGLE上で回路をこねくり回します。
プリント基板も作りたいときは、部品の形状データが含まれているので、すぐ画面上で配置していく事が出来ます。自動配線させる事も出来ます。形状を変更する必要があれば、部品をライブラリから選び直せば良いのですが、標準のライブラリにない部品の場合は、個人ライブラリに新規登録して、これを使うようにします。ライブラリ部品は整理されたものでなのではないようで探しにくく、これに時間を取られてしまいますが、自分でライブラリに登録するのに抵抗があり、インターネット上に公開しているEAGLE用ライブラリを探していました。部品メーカによっては、部品データをダウンロード出来る事もありますが、結局余計時間がかかってしまう事が多々あるので、今は多少大変でも個人ライブラリに登録する様になりました。これも、EAGLEの操作に慣れてくると、そんなに苦でもなくなってきます。
サンハヤト社の感光基板を利用しましたので、インクジェットプリンタ用専用フィルムに印刷し、15W電球型蛍光灯をアルミホイルで裏張りした小さな段ボール箱に取付けた簡単なライトボックスを被せて5分間感光、5分現像すればエッチングの準備完了。簡単に書いてしまいましたが、フィルム・感光基板は高価で一発勝負なので、いつも緊張します。エッチング液は5回程度使い回し出来ますので、私の場合年間200mlが1本位で済むので、気楽に作業出来ます。昔から基板は1.6mm厚と決まっているですが、最近は小さなサイズしか作らないので、1.0mm厚が気に入っています。高価なので、どうしても安い方に目がいってしまいます。今の所、多くの人が使える安い方法が無いのと、ピン間2本の細かいパターンも作れるので感光基板を利用しています。
写真はR1版のPCBなので、公開しているものと若干違います。
(LEDとフォトトランジスタの位置を逆にしてしまった!のでした)
R2では改善しましたが、SDカードソケット(スロット)の位置決め穴がズレている所があったり、バッテリ端子と接近し過ぎでしたので、また改善が必要です。そのうち、ライブラリを修正したいと思います。とりあえず、穴を開け増したり、位置決めボッチをニッパでカットしたりして対処しました。
<ケース>
ぴったり合う様な、都合のいいサイズのケースは市販されていないので、いつもの様に、アクリル板でケースを作りました。
材料は二枚の小さな黒と乳白色のアクリル板で、切断と曲げ加工、穴あけ作業を行いました。切断は、プラカッターと、紙ヤスリで綺麗に仕上げ、曲げは専用の棒ヒータを使うととても簡単です。カットして接合しても良いでしょう。接合にはアクリル用接着剤が必要です。SDカードの角穴については、ドリルでの穴開けと棒ヤスリを駆使すれば、意外と綺麗に出来ます。
前バージョンに比べ、若干薄くなりました。大分出っ張り感がなくなった感じです。
背面のくぼみにピッタリはまります。固定は、磁石での吸着で考えていましたが、本体スタンドにうまく引っかかり、外れにくくなっていたのでそのまま使っています。
<使用状況>
問題点あり。PC20の電源を入れると自動的に記録開始するのですが、数秒〜1分程度起動に時間がかかります。実は、既に設計中にこの問題に悩んでいた事です。スリープ中はUSARTのクロックが止まるので、データが来ている事を検出するには、何らかの対策が必要です。信号レベルで割込をかける等の対応を考えていましたが、実際やってみると1秒間隔でスリープが解けるので受信データを受けられ、とりあえず使う事は出来ました。しかし使い込むにつれて、このタイムラグが気になり始め、きちんとした対策を打たないとダメだなと感じました。
<関連>
「自作電子小物/PC20データロガー/SDカード版」←PSoC1使用
<あとがき>
以前のV0.2は、長時間計測する場合に大変重宝していたのですが、複数台で記録したい時に時刻合わせするのが面倒だったのと、電源周りに入手しにくい部品を使っていたので、他の人は作りにくいだろうなあと思っていました。1台どうしても欲しいと言う方に差し上げてしまったり、AVRでSDカードが扱える様になったので、この機会に作り直しする事にしました。回路、ソフトウエアは直ぐ出来たのですが、プリント基板を起こすのに時間を取られてしまいました。小さいケースに3本も電池を入れ残りスペースが少ないので、本来ならSMD(表面実装部品)を使うべきなのでしょうが、入手しやすいリード形の部品にこだわったので、基板パターンの設計に何日も要しました。結局、ジャンパ線を無くす事は出来ませんでしたが...
PC20をお持ちで、AVRのプログラム書込みが出来て、プリント基板作るのは任せておけという方、こんな条件に合う方はほとんど居ないでしょうから、参考程度に見て頂ければ幸いです。
富樫 豊彦 tog001@nifty.com
DMM data logging attachment for SANWA PC20.