自作電子小物/実験用DC電源 V0.5
自作電子小物/実験用DC電源 V0.5
Power supply mini V0.5
2010年12月8日水曜日
実験用の小型直流可変電源装置で、20V/1A級、定電圧および定電流の機能を持ちます。デジタル電圧・電流計が付いており、変動あるとカツカツ音、過負荷時等に警告音も出ます。コンセントへはACアダプタを使用していますので感電の心配もなく、単純で簡単に作れます。
製作費は約3000円、電源部に可変3端子ボルテージレギュレータ、制御部にマイクロチップテクノロジ社のマイコン PIC16F88 を使用し、ソフトウエアは C言語 にてコーディングしています。
<機能/特徴>
■定電圧だけでなくmA単位で定電流させる事が出来る
■暗い実験部屋でも、現場の直射日光下でも読取り可能な表示
■入手しやすい部品で作りやすい
■面倒な校正作業は不要
<仕様>
名称:小型DC電源
分類:電圧・電流表示付き実験用可変安定化直流電源装置
入力電源:ACアダプタ10〜30V経由の商用AC100電源
出力電圧:DC1.25〜20V(最大は入力電源と負荷電流により変動)
出力電流:〜1A
表示:
種別:8桁×2行 キャラクタLCD(バックライト付)
項目:上段:出力電圧[V]、下段:出力電流[mA]または電力[mW]をスイッチで切換え
精度:
電圧:±5%(表示は〜約5Vは0.01V、それ以上は0.1V単位)
電流:±5%(表示は〜約50mAは0.1mA、〜約500mAは1mA、それ以上は0.1A単位)
更新頻度: 約10回/秒
付加機能:
設定値を超えるとビープ音(初期値:20V、700mA)
変動があるとクリック音(初期値:0.1V、10mA)
電流のゼロ値校正等の設定変更機能
電源が切れても設定値は保存される
外形:幅:120mm、奥行き:130mm、高さ:55mm(突起部を除く)
<技術的なポイント>
■ハードウエア
・Microchip Technology社のPIC16F88マイクロコントローラ
・電圧・電流の計測
分圧抵抗による直流電圧の計測
シャント抵抗(微小直列抵抗)による直流電流の計測
オペアンプを使用した高ゲイン増幅
複数チャネル対応
・オペアンプLM358での非反転増幅とマイナスオフセット対策
・圧電スピーカの単純直接駆動
■ソフトウエア
・プログラミング言語はC、開発環境はMPLAB IDE、コンパイラはHI-TECH C
・独自LCDモジュール表示ライブラリの利用
・HI-TECH CのEEPROMアクセスライブラリの利用
・ビープ音のソフトウエア処理
■開発法
・回路とプリント基板設計は、無料で利用出来るCadSoft Computer社のEAGLEを使用
・回路シミュレーションは、無料で利用出来るLinear Technology社のLTspiceを使用
・プログラム開発は、無料で利用出来るMicrochip Technology社の標準的なIDEを使用
・プログラム書込み器は、Pickit 2を使用
<おおまかな設計>
■目標とする仕様
まずは、目指す小物の機能・性能を整理します。
想定する用途:電子部品の動作を確認するための電源源。電池の代わりに長時間電力を供給。
出力電圧・電流:0~20V、~1A
付加機能:
定電圧または定電流動作
過電流、過熱保護
電圧および電流のリアルタイム表示
電圧最小精度=0.01V 電流最小精度=0.1mA
自己校正
電圧、電流の監視と警告音
■全体構成
安く済ませたいので、機能統合による部品削減を狙って考えてみました。電圧/電流を安定するように制御させるという事は、少なくとも電圧・電流を検出/測定する機構が必要になるはずです。この制御情報をそのまま数値表示すればパネルメータの代わりにもなります。全てデジタル的に制御すれば、かなり部品数を減らせ、とても面白そうです。しかし、実用的な負荷レスポンスを得るには高速な処理能力が必要だと思われます。結局、高価なものになってしまいそうです。
現実的には、安くて便利な電源用ICを利用するのが最善だと考え、電源部分と表示する部分を完全に分け、独立させる構成とします。
おおむね下記の構成になると考えました。
■PS(Power Supply、電源)部
AC100Vから任意の直流電圧を発生させる機能ですが、次のような方法を考えてみました。
(1)変圧器+AC-DC変換+可変電源用IC
(2)AC-DCスイッチングレギュレータ(可変出力)
(3)AC-DCスイッチングレギュレータ+可変電源用IC
変圧器(トランス)は大きくて重くて、そして決して安くない入手しにくい部品なってしまいました。現状では、スイッチングレギュレータの方が入手しやすくなっています。ただ、出力電圧を可変できる物はあまり見かけません。そのため、固定直流電圧出力のスイッチングレギュレータ、特に入手しやすいACアダプタ型の物を利用する事とします。これで、一旦DC20V程度に落とした後で、安価な方法を使い可変制御します。この中間的な電源は、メータ部での電源にも流用できます。また、AC100Vを直接触る危険性がなくなるため、気軽に工作する事が出来ます。
可変電源用ICはたくさんの種類がありますが、一番ポピュラーなのが3端子ボルテージレギュレータです。1A位の規模なら、外付け部品がほとんど必要なく値段も手頃です。ただし、電力を自己消費して電圧を安定化しようとするため、エネルギー効率的には良くありません。また、可変タイプは0Vからの出力が簡単には出来ません。0Vからの出力を行いたければ、多少の外付け部品が必要になる別のICを探す必要があります。
DC-DCコンバータ系のICを使えば、電力変換されますのでエネルギー効率の問題は少ないはずです。スイッチング動作する関係上、電源に乗るノイズが多い事は覚悟しなければなりません。もっとも、前段でスイッチングレギュレータを使いますので、ノイズ問題を気にするのはおかしいのですが。また、0Vからの出力は一般的には出来ません。
実験用の電源という事で、できれば0Vから可変させたかったのと、あまりこの部分に時間を掛けたくはなかったので、電源キットを使う事にしました。秋月電子通商の「実験室用 定電圧安定化電源キット(パワートランジスタ仕様)」が1500円とちょっと高い(私的に)のですが、0Vから出力出来たり、定電流制御できるという理由で使用を決めました。実はその後、仕様が満足出来ない部分がある事が判り、使うのを止めてしまいました。再検討した、というか新たに部品を取り寄せる時間ももったいないので、0V出力を諦め手持ちの格安の可変3端子レギュレータを使う事にしました。0V出力のボルテージレギュレータで比較的入手しやすい物(LT3080)もあったので、本来ならこれを使うのが適当と思われます。
■メータ部
アナログでもデジタルでも既製のパネルメータが1つ1000円程度で入手できますので、材料費2000円の範囲で検討してみます。
多チャネルのパネルメータの内部構成は前図のように、
・電圧電流検出
・アンプ(×10倍以上)
・セレクタ
・A/Dコンバータ
・補正演算
・デコーダ(数値->表示データ変換)
・セレクタ
・表示器
といったコンポーネントが必要だと思われますが、マイコンを使えば、ほとんどの機能を内蔵させる事が出来ます。安価な製品が多数ありますので、それ以外の選択はあまり考えられません。考えなければならないのは、入出力部分の接合とコストの事です。
「電圧電流検出」は、色々な方法がありますが、今回の使用条件を考えれば抵抗器を使った安価で単純な方法で問題ないと思われます。電圧は、マイコン電源を越える場合、分圧抵抗で比例減圧してやります。電流は、負側(ローサイド)の線に抵抗を挿入(直列接続)し、両端に発生する降下電圧から電流値を計算します。一般的に、この抵抗をシャント抵抗、電流電圧変換抵抗等と呼び、負荷回路への影響がないよう出来るだけ小さい抵抗の物が使われます。+50円
「アンプ」は、電流検出で発生する極めて小さい電圧を扱う為に必要です。一例として、0.1Ωの抵抗に1mAの電流が流れた場合100μVの電圧が発生しますが、マイコンでは最小5V/1024カウント=4.9mVからしか計測出来ませんので、100倍程度の増幅をしなければなりません。また、増幅率が変動する様では正確な数値が出ませんので、オペアンプ等が適切です。PSoCやMSP430(SD16内蔵品)等には、このような用途に使えるPGA(プログラマブルゲインアンプ)を内蔵していますので、外付けせずに済みますが、若干値段が高くなります。計測用のオペアンプは数百円しますが、汎用品は数十円とかなり安いものもありますので、外付けオペアンプでもコスト的には問題ないようです。0V近辺の測定となりますので、PSoCのように0V,電源辺りが怪しくなるやつは苦労(前バージョンV0.4での話)するので、レールツーレールの品種を探します。LM358はレールツーレールではないのですが、GND付近はきちんと動作するようなので使えるはずです。入力オフセットが2~3mV程ありますが、マイコン内での補正計算するだけなので問題なし。何か見込み違いの事があればマイコン内で補正してやる作戦です。+50円
「表示器」は、3桁×2行程度の表示量なので、7セグメントLEDかキャラクタLCDモジュールかと思います。セグメント型のLCDパネルで安い出物も見かけるのですが、入手性やピン数が激増=マイコン価格上昇するので、使うのがためらわれます。好みで言うと、7セグメントLEDなのですが、意外とピン数が必要でマイコンが18ピン、20ピンの物だとぎりぎり足りるか足りないか位で、無理なく使うには28ピン程度のマイコンが必要です。このところ、キャラクタLCDモジュールが比較的安く入手出来るようになってきましたので、今回はこちらを使用する事にします。+500円。
最後に「制御部」マイコンの選択です。/Dコンバータの付いているものなら何でも良いのですが、今回は補正処理等、若干複雑な処理を行う必要がありそうなので、プログラムメモリ容量が厳しくなく、手持ち品を早く消化したい理由もあり、PIC16F88にしてみます。+200円
以下は部品探ししたときのメモです。
以上で合計800円、だいたい1000円ぐらいで実現できそうです。
<詳しい設計>
■PS部
可変3端子ボルテージレギュレータLM317Tは、データシート通りの使い方です。ただし、定電流機能を持たせるために、2つの素子を直列構成にしました。前段では電流制限させ、後段で定電圧制御させるものです。この組み合わせ法については、データシートやアプリケーションノート等には載っていません。私の勝手な判断で考えた物なので、何らかの問題を含んでいるかもしれません。ですが、実験でうまく動作する事は確認しています。
前段の電流制限する所ですが、若干説明させて頂くと、LM317はOUTPUTとADJ間の電圧が1.25Vになるように流量をトラッキングしますので、OUTPUTにシャント抵抗を付け、この抵抗間に発生する電圧(つまり流れる電流と正比例)をADJに戻す事により、電流を一定に保とうとする動きになります。シャント抵抗を可変にする事で、任意の定電流源となる訳です。
負荷電流1A
>---LM317---1.25Ω---+--------->
| |
+-------------+
<-制御電流
ところが、使用するボリューム(可変抵抗器、ポテンショ)内をもろ負荷電流が流れていきますので、流す電流によってはあっと言う間に焼き切れてしまいます。よって、かなり許容電力の大きいボリュームが必要になります。かなり高価な物になりますので、せめてボリュームの許容電力を下げるという目的で、固定抵抗を直列に挿入し一部肩代わりしてもらいます。電源の仕様を最大1Aに設定しましたので1.25Ω以下の抵抗値にする事は意味がない事になりますので、1Ω/1Wの抵抗で肩代わりしてもらう事にします。これで、ボリューム側には最大0.25Wの許容電力の物で良くなります。実際は、ボリュームの物理的な構造を考えると、ツマミがわずかに開いている状態では、そこに発熱が集中するので許容できなくなると想像します。ボリュームの仕様上の許容電力と、私が理解しているものとは違うかもしれません。一度、焼き切れるかどうか確認してみたい気もしますが、とりあえず操作方法を注意する事にします。
後段の定電圧する方は特に説明すべき点はありませんが、電圧調整用のボリューム値だけ。
最大20Vですので、ボリューム値を計算すると、1.25V/20V : 240Ω/3.84kΩなので、5kを用意すれば良い事になります。
■メータ電圧検出部
PIC16F88に入力できるアナログ電圧の上限は電源5Vです。最大20Vまで測定出来るようにしたいため、5/20=1/4、四分の1以上分圧する必要があります。部品種を減らしたいので1k:10kΩとします。
なお、低電圧での精度を上げるために、分圧せずに直入力するルートも作ります。電源電圧を越える電圧がマイコンのピンに入って来ないようにダイオードで電源ラインに逃がしてやりますが、直結だと電源ラインが耐えられないので、流入量を制限する抵抗を直列に挿入しておきます。電圧計測するだけでならばμAも要らないぐらい小さい電流で済むので高抵抗で問題ありません。当初10kにしていましたが、電流計測側への流れ込みが確認されたため、100kにしました。1Mでも良いはずなのですが未確認です。
■メータ電流検出部
シャント抵抗の挿入位置について
一般的には、電源出力の直近の正側もしくは負側に取り付けます。正/負のどちらが有利かケースによって変わると思いますが、負側が回路が簡単になるのでこちらの方が良いでしょう。
今回、ロードレギュレーション改善と抵抗値アップ(精度向上)の目的で、電源回路内に配置する方法を考えてみました。内側に持ってくる事でロードレギュレーションは素子性能を100%発揮でき、シャント抵抗に1Ωという計測する側としては大変扱いやすいものにする事ができます。扱いやすいとは、入力オフセットの影響が少なくなるし、何かと高倍率のアンプはデリケートなので問題を減らせます。計測される電流値には電源制御の為の電流も含まれてしまいますが、これは計算で差し引いてしまえば良いのです。
実際、回路を組んで確認してみました。結果は、電源制御電流はどうも一定でないらしく、入出力電位差が小さくなると減ったり、動きは単純ではないようです。個体差等もある事も考えられます。電流値は数mAとさほど大きくはないのですが、無視出来る程でもありません。この作戦は使えそうもないと判断しました。
という事で、一般的なやり方に戻る事とします。抵抗値は0.1Ωだと、1A時は0.1Vの電圧降下が発生しますが、この程度だと問題ないと考えました。
■メータアンプ部
汎用オペアンプのLM358で非反転増幅回路を行います。設定するゲイン(増幅率)は
前提:
出力最大振幅=3.5V
入力オフセット電圧=3mV(2mV品もありますが悪めで設計)
電流検出抵抗=0.1Ω
A/Dコンバータ基準電圧=5V
A/Dコンバータ最大カウント数=1024
最小電流=0.1mA
1カウントが0.1mAという意味になるので、
1カウント電圧=A/Dコンバータ基準電圧/A/Dコンバータ最大カウント数=5/1024=4.89mV
0.1mA時に発生する両端電圧が0.1mA×電流検出抵抗=0.1mA×0.1Ω=10μV
この電圧を1カウント出来るまで増幅するのだから 4.89mV/10μV=489倍
約500倍以上のゲインが必要になります。
この500倍のアンプが測定できる範囲は、
まず、入力オフセット電圧があるので底上げされてしまう分が
入力オフセット電圧×ゲイン=3mV×500=1.5V
アンプ出力最大振幅が 3.5V
差し引き 3.5V-1.5V=2V
増幅前の値に戻すと
2V/500倍=4mV
電流値に変換すると
4mV/電流検出抵抗=4mV/0.1Ω=40mA
これだと0〜40mAしか計れません。
対策は精度を落として範囲を広げる方法です。ゲインを動的に変えるか、ゲインの異なる複数のアンプを用意する必要があります。
例えば、
1mA単位の精度ー>400mAまで 50倍
10mA単位の精度ー>4Aまで 5倍
動的にゲインを変えるのは、また新たな部品が必要になるので面倒です。
複数のアンプを用意する場合は、3個必要となります。LM358は2素子ですので、10mA単位の精度はあきらめ、アンプを通さない1倍の数値で計算する事で2個済む様にします。あきらめられない場合は、4素子が入ったLM324に変更すれば良いと思います。
なお、入力オフセット値が最悪値7mVだった場合、7mV*500倍=3.5Vとなり、計測不能になってしまいます。別の個体から選別するか、他の品種への切換えを行う必要があります。この辺を保証したければ、最初からオフセットの小さい計装用のオペアンプを選択する必要があります。
【増幅ノイズ対策】
オペアンプを使用するのは初めてでしたので、基本的な動作確認を行いました。
上記の101倍非反転増幅回路をブレッドボード上に組み、入力電圧は抵抗器で与える様にして電源5Vで計測しました。
出力側のコンデンサは、In=0V条件の時にOutに約200mVp-pのノイズが出てしまっていたので、バイパスの目的で付け加えました。完全には無くせませんがDMMでの計測が出来る範囲に収まります。最初、DMM表示にマイナス値が出てビックリ(あり得ない)し、波形を確認してやっと気がつきました。ノイズ源になりそうな物、電源をバッテリに変えたり、計器を全部外したりしても同じでしたのでLM358自身から出ていると考えられます。
【マイナスオフセット対策】
表計算ソフトでOutデータをグラフ化し、倍率とオフセットを確認。x軸がInでy軸がOutです。倍率が101.06と非常に正確です。おかしな事に、マイナスのオフセットが出ています。-85mVと言う事は入力オフセット値は-0.85mVと言う事です。データシートでは標準3mなのでOutは300mV位を期待していましたが、こんな事ってあり得るのでしょうか?この測定条件でのみ発生する可能性も考えられるのではと思った為、条件を変えて測定し直したのが以下の物です。
左から右へ、
101倍=100kΩ:1kΩ A素子 ー> -0.55mV
501倍=1MΩ:2kΩ A素子 ー> -0.6mV
556倍=100kΩ:180Ω A素子 ー> -0.5mV
556倍=100kΩ:180Ω B素子 ー> -0.1mV
値は変わるものの、やはりマイナスオフセットでした。
別の個体に変えたり、LM324でも同じ傾向を示しましたので、もしかしたら測定方法が間違っているかもしれませんが、事実は変わらないので受け入れるしかありません。
マイナスオフセットだと何が不都合かと言えば、0V付近の測定ができなくなると言う事です。-0.85mVの例で0.1Ωの電流検出抵抗の場合、8.5mA以下は測定不能という条件がつく事になってしまいます。これは、大変困る、この辺りの電流が計れないと私的には意味が無くなってしまうので何らかの対策を施します。
やはり、計装用のオペアンプを使うのが本筋だと思いますが、どうしても安くしたいので、一定電圧を加算する方法を検討します。マイナスオフセットを打ち消す電圧を加えるのです。一定電圧は電源を分圧して作り、加算方法は非反転増幅での典型的な加算手法の抵抗混合器を使えば実現出来そうです。回路シミュレータのLTspiceを利用して確認します。
R5,R8でシフト量を決める一定電圧を作り、R9,R10で50%:50%で混合します。このとき、入力信号は50%に減衰してしまいますので、一定電圧は2倍に、アンプのゲインも2倍割り増しする必要があります。-1mVまで救済出来る様にするとしたら2mVの設定です。グラフは、緑色がR4に流れるターゲットの電流、青色がout1の101倍電圧、赤色がout2の501倍電圧です。
LTspiceはリニアテクノロジ社が無料で提供しているソフトウエアですので、自社部品しかライブラリ部品がありません。ありがたい事に、LM358のナショナルセミコンダクター社からモデルデータをダウンロードして利用出来ます。このライブラリのLM358は約0.6mVのオフセットとなっているようです。モデルの変更方法が判らなかったので、マイナスオフセット時の確認迄は出来ませんでしたが、実回路での確認は出来ました。
ブレッドボードで実際に動作させた結果が以下のグラフです。
条件は、最後の「556倍=100kΩ:180Ω B素子 ー> -0.1mV」と同じです。
持っている部品の関係で、シフト量が1.2mVになっていますので、結果が1.07mVと言う事は、オペアンプの入力オフセットは-0.13mVだと言う事です。対策前が-0.1mVだったので、おおむね合致します。
■メータ電源部
メータに5V電源を供給する部分が必要になりますので、これも簡単に3端子ボルテージレギュレータを使って生成します。
最大5V/100mA程度の電流が使われますが、最大30Vの入力があるので、電圧差25Vを吸収する必要があります。電力消費は
(30V-5V)x0.1A=2.5W
2.5Wもの許容損失の品種が必要になります。幸いな事に、ポピュラーな7805がこの条件を満たします。ちょっと過ぎるような部品選定ですが仕方ありません。
<回路図>
結果的には、電流計測にオペアンプを使うと言う一般的な回路構成になりました。そのため、部品数が増えてしまいましたが、入手し易いものばかり選定していますので、作り易さと言う意味では良いと思います。LCDはSC802やSC1602でも良いでしょう。
もっと、部品数を少なくしたかったのですが、やはりこれが限界かと。
<部品>
PS部
R20のボリュームは1W品なので、入手しづらいと思います。入力電圧範囲が広いので、余っていたり使っていないACアダプタが流用出来るかもしれません。私の場合、プラグ部分が壊れたノートPC用のアダプタを捨てられずに持っていたのですが、それが24V出力で丁度良かったので、プラグを付け替えて使ました。
メータ部
合計3000〜5000円ぐらい。これにプリント基板作成すると+1000〜2000円、ケースに1000円と言った感じです。電子部品よりは、コネクタや端子、ツマミ等の機構部品が高いです。壊れた可変電源装置なんかがあれば最高なのですが、秋葉原ジャンク屋めぐりは憧れです。
<ソフトウエア>
■開発に必要な物
Windows PC(パソコン)
Microchip MPLAB IDE 8 (*1)
HI-TECH C PRO for the PIC10/12/16 MCU Family(Lite) V9 (*1)
PICkit等のプログラム書込み器
*1: Microchip社のサイトからダウンロード可能
■ソースコード
以下、使用しているソースファイルの説明です。
main.c : アプリケーション本体。LCD関係以外の全てが記述されています
lcd.c : LCDモジュール制御サブルーチン本体
lcd.h : LCDモジュール制御サブルーチン定義体
割込など特別な事は行っていませんし、単純な処理なので、ソースコードを読めばすぐ判ると思います。A/Dコンバータから値を取込み、変換計算をして、LCDに表示する処理を無限に続けるのが主なロジックで、その中に値が越えた時に音を出すとか、ボタンが押された時の処理とかが入っているだけです。
傾き誤差を簡単補正する機能を追加しようとして、プログラムメモリが足りなくなってしまい、まだ実装されていません。printfは使い易い、判り易くて良いのですが、メモリを沢山使ってしまうのが難点です。後で記述しますが、補正せずとも実用的な精度であった事から、とりあえずそのままで使う事にしました。
<ダウンロード>
ライセンス: フリーソフトウエア(GPL v3)
作成者:富樫豊彦 tog001@nifty.com
開発環境:
Windows2000 SP6 / VMware Fusion 3.0.2 / Mac OS X 10.5
CadSoft Computer EAGLE 5.6 Light Edition for Mac
Microchip MPLAB IDE 8.36
HI-TECH C PRO for the PIC10/12/16 MCU Family(Lite) V9.65PL1
PICkit 2 v2.60
<基板>
蛇の目基板でも十分作れると思いますが、メータ部分のみ、専用プリント基板を作ってしまいました。
LCDモジュールのACM0802CとSC802,SC1602は同じ14ピンコネクタなので差し替えしたくなりますが、電源ピンが逆ですので注意が必要です。たぶん、コントローラが生きていてもLCDパネルがダメになると思います。
右の写真は、黒いボール紙に四角い窓を作り適当にテープ止めした物です。LCD窓とケース窓が異なるので一工夫と言った感じです。
<ケース>
ぴったり合う様な、都合のいいサイズのケースは市販されていないので、いつもの様に、アクリル板でケースを作りました。いつもの2009スタイルで、厚めの5mm透明アクリル板を側面に、天板は3mm厚乳白色を使っています。側面は、 表示窓以外の内側を黒で塗装する方法で、窓の処理を手抜きしました。もっと小さいサイズで良いのですが、事情によりデカく重くなってしまいました。底面写真を見て頂くと判る様に中はスカスカです。
正面。
上面。
背面。ヒートシンクはPCのCPU用の物を流用しました。変な形なのでケースを作るのに難儀しました。 多分、昔100円で買った物だと思います。電子部品屋では高いのですが、パソコン屋ではデカくて安い物を見つける事が出来た時代の物です。
側面。
底面。特に底板は作りません。電流制限調整用ボリュームがデカイので、当初決めていた位置に収納できなかったので、左側面に貼付けています。これでは、あまりにも使いにくいので、今は焼けるのを覚悟で小型のボリュームに変更し正面パネル上にツマミを出しています。
寸法図。
<性能検証>
メータ部分の精度を確認しました。
電流の自動ゼロ補正ボタン操作を行った以外は、補正していない状態です。意外とオフセット・傾きとも差が少ないので、補正する必要もないかもしれません。誤差率で見ても目標の5%には収まっているのでまずまずです。100mA以下の部分で-3%になっているのが最悪部で、他は大体±1〜2%なので通常使う分には十分だと思います。
<参考>
当初、秋月電子通商の「実験室用 定電圧安定化電源キット」K-00202を利用する構想でしたが、結局使いませんでした。買ってみないと判らない事があったためです。
次の理由で選定しました。
・0V〜出力
多くの電源キットは最低電圧があり、0Vから出力させる事が出来ない
素子の特性を調べる時に、0V付近の電圧が必要になる事がある
・定電流機能
LED等、電流がポイントとなる素子の確認に使える(1〜100mA程度)
・リモートセンシング機能
シャント抵抗の外で定電圧制御させる事が出来れば、抵抗値を上げてもロードレギュレーション
(負荷量による電圧変動の少なさ)が悪くならないと考えた
シャント抵抗の抵抗値を上げられれば、微弱電圧を扱わなくて済むので作りやすく、
場合によってはアンプを省けるかも
次の理由で最終的に使用に至りませんでした。
・定電流とは言っても、最低電流が標準部品で6A〜、部品変更したとしても60mA〜にしか出来ないので、私的に使う場面が少ない。
・リモートセンシング機能では2つの課題が発生しました。シャント抵抗の件については、うまく機能したようにみえましたが、計測される電流値に数mAのセンス電流も加わってくるため、計算で補正する必要がありました。もう一つが致命的で、小電流・小電圧では発振してしまう事です。リモートセンシング機能を使うと発振しやすくなる事は判りますが、50mAぐらい(電圧等でも変わる)を下回ると発振現象が現れてしまい、いくらノイズ対策等をしても回避のしようがありませんでした。
本来が10A級の電源なので、小電流で使う事は元々無理があったのです。
<関連>
<あとがき>
サイドビジネス?が忙しくなり、大分間が開いてしまいましたが、まだ生きています。
性懲りもなく実験用電源はV0.5となりました。V0.4の電源基板を壊してしまい付録基板の再入手もできないので、物置で眠っていた初代(電圧表示だけ)を引っ張りだして使っていました。やはり電流計が付いていないと不便なので、さくっと作るつもりが長期間かかってしまいました。ちょっと不満な点があったので、実はV0.6も用意しています。
食べず嫌いでオペアンプを避けていましたが、素直に動作するし動作範囲も広く簡単、値段も格安。単体のトランジスタから離れて行きそうです。
富樫 豊彦 tog001@nifty.com
Variable DC power supply with voltage & current display
20V/1A class